独立行政法人改革における国立女性教育会館の扱いに関する要望

2011年10月25日

関係各位

独立行政法人改革における国立女性教育会館の扱いに関する要望

日本女性学会第16期幹事会有志

●代表幹事:海妻径子
岩手県盛岡市上田3-18-34
岩手大学人文社会科学部
Tel/Fax:019-621-6750)
●学会事務局:
千葉県市川市南八幡1-16-24
Fax:047-370-5051

2007年のいわゆる「事業仕分け」に際し、独立行政法人・国立女性教育会館の他機関との統合および民営化が検討されたことに対して、日本女性学会幹事会有志は行政改革担当特命担当大臣(当時)・渡辺喜美氏宛ての12月15日付要望書において、強い反対を表明して参りました。

にもかかわらずこのたび、再び国立女性教育会館の他機関との統合および民営化(NPO法人化)が行政刷新会議において検討されていることに、大きな危惧をおぼえます。

2007年の「事業仕分け」に際して、全国から反対の声が多数寄せられたことは、国立女性教育会館が創立以来30年以上の長きにわたり、女性差別撤廃、ジェンダー(男女)平等社会の実現のための情報発信と学習・活動の場として、極めて重要な役割を果たしてきたことの証左です。と同時に、女性差別撤廃条約批准国にもかかわらず女性の政治的・経済的・社会的地位の改善が遅々として進まない「人権後進国」日本の状況を、多くの人が憂慮し、国立女性教育会館にはこれまで以上の機能強化を期待こそすれ、経済効率優先の視点から安易な組織統合・機能縮小が行われジェンダー平等政策が後退することを、決して望んでいないことのあらわれではないでしょうか。

周知のとおり、日本は2009年に国連女性差別撤廃委員会より、差別撤廃の遅れを強く指摘されている状況です。国立女性教育会館のようなナショナルセンターが、ジェンダー平等政策の推進拠点として果たすべき役割は、むしろ大きくなっています。目的の異なる他組織との統合は、国際公約としても遅れの許されないジェンダー平等政策推進の、機動性を損なうことになります。また、NPOにおいても女性が男性よりも不安定・低収入で雇用される傾向が指摘されている現状で、経済効率優先の視点から民営化(NPO法人化)を進めた場合、女性差別撤廃に携わる職員(その多くが女性です)自身が女性ゆえの不安定・低収入雇用で働くという、矛盾におちいりかねません。会館で働く専門性の高く経験の豊富な職員あればこそ、国立女性教育会館はジェンダー平等政策推進のナショナルセンターたり得ます。職員の方たちが安心して職務に従事できる環境の確保という観点の無いまま、国立女性教育会館をいわゆる単なる「ハコモノ」としてとらえ、財政削減の対象とすることには、疑問を感じざるを得ません。

以上の理由から、独立行政法人・国立女性教育会館の他機関との統合および民営化(NPO法人化)に、私たちは強く反対いたします。