目次
2024年度日本女性学会大会報告
シンポジウム コーディネィター:牟田和恵、内藤和美
本シンポジウムは、女性学の継承の必然性と困難を共にひしひしと感じる中で発意された。多様な学問分野/テーマについてジェンダーに関する研究が行われるようになったいま、女性差別に抗し、女性としての経験からの理論化を試みる「女性学」は “ 狭い ” のか?意義を失いつつあるのか?女性学が創出したと言える鍵概念「ジェンダー」の広がり/展開/深化は、女性差別や女性カテゴリーの問題を後景化させ、それらと対するうえで新たな困難を生んでいるかもしれず、だが逆に新たな可能性を生んでいるかもしれない—これらを問うて、シンポジウムでは、女性学のパイオニア世代の上野千鶴子会員とつづく世代の佐藤文香会員に発題いただき、加藤秀一さん(フェミニズム・ジェンダー・生命倫理学)・古川直子さん(ジェンダー/ セクシュア リティ研究、精神分析理論)に討論いただいた。
上野会員は「女性学を創る〜世代間継承へ向けて〜」と題し、日本の女性学の誕生と故井上輝子会員による定義の意味、制度化・アカデミズム化の過程、展開とくに「ジェンダー研究」への展開過程を辿った上、女性学の達成と課題を提起した。課題の指摘は、「女性」という集合的アイデンティティ自体、女性としての「経験」の重層性・多様性から、知の再生産システムに組み込まれることの功罪、ジェンダー概念の “ 標準化 ” 等々多岐にわたった。
佐藤会員は、「女性学とジェンダー研究の間—何が異なり、なぜすれ違うのか」と題し、女性学とジェンダー研究の関係の認識の違い等、 「女性学創設世代」と「ポストジェンダー研究制度化世代」のディスコミュニケーション、すなわち継承の困難の根本は、ジェンダー概念が、ジェンダー/セックス二元論の第 2 パラダイムから、二元論パラダイムからの解放(ジェンダー/セックスの区別の廃棄)を標榜する第 3 パラダイムへと移行したことにあると指摘した。そのうえで、世代間ギャップを架橋する、4 通りの解放への道筋を提示した。
「女性学の継承」の課題化のしかたが異なるお 2 人の発題を受け、加藤氏は、ジェンダー概念をどう使うかと、社会運動とフェミニズムについて見解を述べた。同じく古川氏は、①第 2 パラダイム:階層秩序(権力関係)としてのジェンダー概念と、第 3 パラダイム:性別二元論批判、2 つの視点は両立するのか?、②ジェンダーへの自由とジェンダーからの自由は同時に実現するか?の 2 点を両発題者に問うた。
これらへのリプライと対話、そして会場討論を通じて、女性学の継承を論じることの、生産的でありつつ困難を知るシンポジウムとなった。
詳細は、ニュースレター162号をクリックしてください。
シンポジウム参加者から、パネル報告、ワークショップ報告もあります。
お知らせ
日本女性学会 2024 年大会において開催された分科会について、発言や運営に問題があったとの指摘、批判がありました。これをうけ、幹事会では、幹事に外部委員を加えた調査ワーキンググループを設置し、指摘された事実の存否を確認し、具体的な問題について調査をいたしましたので、その結果を公開いたします。詳細は、ニュースレター162号をクリックしてください。
少額活動支援
2024 年度の少額研究活動支援は、6 月の総会で、次の 2 つの研究に対して行なわれることが決まりました。
児玉谷レミ:自衛隊広報のジェンダー分析、
楊雅韻:「医薬品」から「化粧品」へ ―「化粧品」業界とジェンダー
次回大会お知らせ
【1】2025 年度日本女性学会大会は、2025 年 6 月 7 日(土)、8 日(日)に立教大学池袋キャンパスで実施いたします。
会場:立教大学池袋キャンパス(対面)
大会日程(予定):6 月 7 日(土) ・14:00 〜 17:30 大会シンポジウム
・18:00 〜 懇親会
6 月 8 日(日) ・9:30 〜 15:30 分科会
・16:00 〜 総会
【2】大会における個人研究発表・パネル報告・ワークショップを、下記の要領で募集いたします。
<個人研究発表・パネル報告・ワークショップ募集について>
- 締め切り:4 月 13 日(日)24 時
- 応募資格:申込時に入会の申し込みを完了していること
- 応募方法:カテゴリー(個人研究発表、パネル報告、ワークショップ)ごとに、下記のフォームに必要事項をご記入の上、ご応募ください。
個人発表 https://forms.gle/e8tSdNaFXQDQXaNw9 パネル報告 https://forms.gle/p29QBe2RETBWnQnd8
ワークショップ https://forms.gle/vWZpigNK7dkhoyEu6
URL で入力ができない場合、事務局にご連絡ください。日本女性学会 事務局 jyoseigakkai-info(アットマーク)genj.jp
・個人研究発表:発表タイトル、発表者名(所属)、要旨(300 字以上 400 字以下)
・パネル報告:パネルタイトル、コーディネーター名(所属)、各発表者名(所属)、各発表タイトル、各要旨 (300 字以上 400 字以下)、司会者名(所属)
・ワークショップ:テーマ、コーディネーター名(所属)、各発表者名(所属)、概要(300 字以上 400 字以下)
- すべての個人研究発表、パネル報告、ワークショップは、「学会活動の自由と公正のための宣言」のもとで行われます。
- 個人研究発表は、ひとつの分科会で、複数の方に発表していただきます。発表の組み合わせ等は幹事会で決定します。
- パネル報告は、共通するテーマの 3 件以上の研究発表で構成してください。公平な時間配分と十分な質疑時間の確保にご留意ください。
- ワークショップは、参加者との共同作業でテーマを発展させていく取り組みで、研究発表とは性格の異なるものです。原則として複数の発表者が分科会全体(2 時間程度)を担当していただきます。
- 発表者、コーディネーター、司会は会員に限ります。応募の際にご確認ください。非会員の方は応募時にご入会ください。
- 個人研究発表・パネル報告・ワークショップをされる方で、学生、院生、OD 等、常勤職についていない方には、学会より旅費の補助を行います(総額 10 万円を人数と距離に応じて配分しますので、補助金額は未定です)。希望される方は、報告申込の際に、その旨記載ください。
会員の著書紹介
矢内琴江著『性差別を克服する実践のコミュニティ』明石書店、2024 年
*久木田絹代著『中学生が綴る労働と DV―語る・聴く・交流が生み出すエンパワーメント』労働教育センター、 2024 年
*岩淵宏子著『女性表象とフェミニズム−日本近現代女性文学を読む』翰林書房、2024 年
*小山美沙子『詩集 原始星』一粒書房、2024 年
*江原由美子編著『ジェンダーと平等』ミネルヴァ書房、2024 年
*岩淵宏子他著『現代女性文学論』翰林書房、2024 年
*有元伸子他編『文学をひらく鍵〜ジェンダーから読む日本近代文学〜』鼎書房、2024 年
*宮津多美子著『異文化コミュニケーション入門―ことばと文化の共感力』勁草書房、2024 年
会費納入のお願い
2023年度までの会費が未納の方は、どうぞお早めにお支払いください。会費納入のお願いと払込用紙はすでに送付しております。払込用紙をなくされた方は、郵便局備え付けの払込用紙をご利用のうえ、下記の納入先までお振込みください。
ゆうちょ銀行 振替口座
口座記号番号 00890-6-31306
加入者名 日本女性学会
ネットバンキングでも納入できます。
ゆうちょ銀行 支店名:089(ゼロハチキユウ) 預金種目:当座 口座番号:0031306
日本女性学会の会費は年収スライド制(自己申告・税込み・該当年度予定収入)をとっております。
・400万円未満(無職・学生含む):6,000円
・400〜600万円未満:8,000円
・600万円以上:10,000円
3年以上会費を滞納されている方は退会とみなされます(日本女性学会幹事改選選挙実施規定第4条(3))。複数年滞納されている方は、過不足なくお支払いいただくためにもご自身の納入状況を事務局にご確認のうえ、どうか早急にお支払いください。
学会の運営は会員のみなさんの会費によって成り立っております。重ねてのご協力をお願いいたします。
永年会員制度をご活用ください
2021年度から永年会員制度が開始されました。前年度までの会費を納めている65歳以上の会員は、前年度会費額の3ヵ年分の納入によって会費完納とし、永年会員となることができます。振り込み時に「永年会費」とお書きください。65歳以上の会員の皆さま、どうぞご活用ください。
詳細なニュースはこちらです(pdfファイルが開きます)→news162会員版