15日の予定はこちらからどうぞ。https://joseigakkai-jp.org/ann/1390/
16日の予定は以下のとおりです。
多くの方のご参加をお待ちしております。
個人研究発表・パネル報告・ワークショップ
6月16日(日) 10:00〜12:00
【第1分科会 個人研究発表】(マーキュリータワー5階3508教室)
司会:杉山直子
マーガレット・フラーとアメリカ女性の夢――Woman in the Nineteenth Centuryにおける“intellectual”をめぐって
西田梨紗
マーガレット・フラーはWoman in the Nineteenth Century(1845)でアメリカの女性たちに、知を養うことの重要性を訴え、「大きくなりすぎた子ども」から一人の人間になるようにと教え説いている。本発表では、19世紀半ばのアメリカ北東部で、知的好奇心にかきたてられていた女性たちの現実を踏まえた上で、Woman in the Nineteenth Centuryに着目したい。フラーはこの本で知の重要性を述べているが、そのことは巧みな戦略を用いて述べられていることを論じたい。加えて、理知的なフラーがロマンチックな要素を持ち合わせていたことも、当時の時代思潮と絡めながら示せたらと思う。
「女性」「LGBT」から導かれるフェミニズム・女性学
真野孝子
第二波フェミニズムの当時、女性たちは「女性」とは何かという問題意識から、フェミニズム・女性学を立ち上げていった。現在では、「LGBT」との連関性から、自己認識の問題としてフェミニズム・女性学へと接近していく傾向である。前者の例として、フェミニズム文学批評の水田宗子と米歴史学者のエステル・フリードマンの「女性」とは何かの発見を回顧し、「女性」から「LGBT」への兆しを見出す。ここに、フェミニズム・女性学の総括と継承を認めるのではないだろうか。
日本の事例から考える人種差別と性差別に関する認知的図式
五十嵐舞
ジュディス・バトラーは、1991年のロドニー・キング事件を事例に、人種差別と性差別が交差する白人の認知的図式を分析する。この近年の黒人への暴力の分析にも有効な分析は、人種が視覚的差異によって特徴づけられる状況に依存した理論である。本報告は、必ずしも視覚的差異を伴うわけではない日本の人種差別的な言説に焦点をあてることで、そのような認知的図式を視覚とは異なる側面から記述する試みである。
若い女性の「フェミニズム離れ」をどう読み解くか――#WomenAgainstFeminism(2013-2014)の分析から
高橋幸
フェミニズムバックラッシュ後の英米では、1990年代以降、フェミニズムから距離を取る若い女性(=ポストフェミニスト)の調査・研究が蓄積されてきた。若い女性を対象にした社会学的な量的・質的調査や、ポピュラーカルチャーにおける若い女性表象についての研究がなされている。本報告では、これらの研究を整理して概観したうえで、2013年から2014年に英語圏で生じたハッシュタグムーブメント#WomenAgainstFeminismを分析し、2010年代のポストフェミニストのフェミニズムに対する態度と主張を明らかにする。
【第2分科会 個人研究発表】(マーキュリータワー5階3509教室)
司会:杉浦郁子
「LGBT」にとって「地方」はいかなる場か――ルーラリティをめぐる語りの分析から
横山陸
性的マイノリティにまつわる研究の多くは、当事者の生活の場として大都市を前提とする傾向にあり、都市部への移住が規範として想定され、地方に暮らす当事者の姿は不可視化されがちであった。このため英語圏では近年、こうしたアーバニズムを批判的にとらえ返す研究群が生み出されつつある。この状況を踏まえ、本研究では日本の新聞報道や当事者の手記などにおいて「LGBT」にとっての「地方」「田舎」がどのように語られているのかを分析し、それらの語りが何を捉えそこなっているのかを明らかにする。
性的マイノリティのパートナーからの暴力(DV)被害と相談行動に関する調査――第一次集計分析
釜野さおり、北仲千里、藤原直子
2018年5月~6月に実施した当調査は、日本で初めて性的マイノリティにおけるDV・ストーキング被害の実態や、被害者が相談につながっているかどうかを調べたものであり、501件の回答、419票の有効回答を得た。今回は結果の第一次集計・分析結果を報告し、実態解明や対策の提案を行っていく上で、どのような示唆が得られたかを検討する。
性的マイノリティに対する偏見と「男らしさ」規範
須長史生
本報告は性的マイノリティに対する偏見の規定要因を特に「男らしさ」に関する規範に注目して明らかにすることを目的とする。調査対象は首都圏の私立A大学に通う一年生 445名で、スマートフォンをなど用いて回答する方法を用いた。調査の結果、偏見や嫌悪感の規定要因として、先行研究と同様に性別、当事者との接触機会、当該知識の量などが抽出されたが、加えてジェンダー意識も有意な要因として抽出された。本報告ではこの点についてさらに考察を進める。
「痴漢」事件の公的数値を読む
牧野雅子
身近な性暴力である「痴漢」。しかし、「痴漢」事件がどのくらい起こっているのかを知ることは容易ではない。性暴力事件には暗数が多いことに加え、「痴漢」の定義は一様ではなく、取締りに適用される法令も多岐にわたり、「痴漢」被害件数という公的数値が存在しないからである。本発表では、公的機関が発表する「痴漢」に関する様々な数値から、相談件数の変動やその要因、被害・検挙状況、取締り機関の対応や性暴力認識を読み解くことで、被害の現実に接近したい
【第3分科会 パネル報告】(マーキュリータワー4階3405教室)
周縁的な身体/性を再考する――アニメ・映画・舞踊における「欲望」の表象から読み解く
司会:清水晶子
ポストフォーディズム下における「多様な身体」を読み解く
葛原敦嘉
ジェンダー化された西洋の舞台舞踊の権力構造に着目し、現代の舞踊表象における「多様性」を読み解く。ポストフォーディズム下において来歴や苦悩といったプライベートな領域はダンサーの経済活動に組み込まれ、振付家は無から創造を行う「作者」から他者を取りまとめる「ファシリテーター」へと変化している。発表ではそうした文脈の中で「多様」な身体として描かれる性的マイノリティや障害者の表象を検討する。
「欠落」した身体とその未来
洪毓謙
人間ではないものとして定義され、支配的な価値観から排除されてきたものとしての怪物表象への読み直すことと現在のフェミニズム・クィア批評への批判を通して、より多くの命の生存ポリティクスを考えたい。2000年代以降の映画で登場するゾンビの「フレキシビリティ」と「セクシュアリティ」の「欠落」した身体とそのナラティブで特定の身体に継続的に未来を与えるのに対し、特定の身体を継続可能性から排除する言説を読み解く。
中間領域としての身体――アニメ・キャラクターとアニメ声優の身体性を再考する
程斯
アニメ声優がますます表舞台に立って活躍するようになった今日、アニメにおけるキャラクターの線画記号であれ、アニメ声優の肉体であれ、それは様々な要素を収束するベースであるに過ぎず、視聴者が感取するのはそこに立ち上がる「中間領域」としての身体だと本発表は主張する。その中間領域としての「身体」は西洋中心的な身体観と異なる重層的な「場」であり、そこに時間と情動の問題も発生する。
【第4分科会 ワークショップ】(マーキュリータワー4階3406教室)
ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた
前之園和喜、児玉谷レミ、山本美里
本WSは、一橋大学社会学部佐藤文香ゼミナールのプロジェクト成果である「Q&A」集の内容を紹介し討議する。若い世代で昨今「プチ・フェミニズムブーム」の動きがあるが、ジェンダーへの知識は人により様々である。Q&A集では、佐藤ゼミに所属している故に私達に投げかけられる様々な質問をまとめ、これに対する初・中・上級者向けの回答を作成した。この成果をもとに、高校生・大学生など若い世代に、身近な問題からフェミニズムやジェンダー研究に関心を持ってもらうことがいかに可能か討議したい。
6月16日(日) 13:00〜15:00
【第5分科会 個人研究発表】(マーキュリータワー5階3508教室)
司会:牟田和恵
障害女性の子宮摘出手術をめぐる語り――80年代初頭の障害者運動と女性運動との対話に焦点をあてて
瀬山紀子
80年代、障害女性の結婚・出産・子育てが脚光を浴びる中、月経時の介助軽減等を理由とした子宮摘出手術も大きな話題となった。また、この時期、障害女性と女性運動との対話があり、産むべき女性と、産むべきではないとされる女性が、女性の価値を健康な子どもを産み、育てることに置く社会の中で共通の困難を抱えていることが見出されている。報告では、障害女性を含む女性の身体に向けられた規範が、問い直されていく過程を見ていく。
日本のキリスト教徒による荻野式避妊法の受容について
横山美和
カトリック教会は長らく避妊を禁じていたが、産婦人科医の荻野久作(1882-1975)の学説をもとにした、いわゆる荻野式避妊法は、1930年、ローマ法王により容認された避妊法となった。一般書や新聞では、荻野式避妊法はカトリック教徒にとっての救いであるように描かれてきた。しかし、日本における受容のされ方について研究がなされていない。本発表では、新聞や雑誌から、日本のキリスト教徒による荻野式避妊法の受容のされ方を考察する。
「中絶」の脱スティグマ化とノーマライゼーション
塚原久美
日本の中絶は世界に比して完全に後れを来しています。医療技術としても世界でほぼ半世紀前に捨てられた方法が今も日本ではメインであり、中絶に対する人々の認識が全く異なるのも、世界で考えられている”abortion”と日本の「中絶」が全く違うものになっているためだと考えられます。本発表では、世界と日本では何が違い、世界で標準の中絶医療を取り入れていくためには、何が必要なのか、どこから着手していくべきかを考えます。
女性運動のNGO化と「第三世界」ジェンダー表象――バングラデシュのアシッドバイオレンス根絶運動を事例として
近藤凛太朗
特に1990年代以降、「第三世界」女性の表象を国際社会に向けて発信する新たな主体として、「第三世界」の女性NGOというアクターが浮上しているが、この事実は従来の研究では十分に注目されているとはいえない。本報告では、アシッドバイオレンス(酸性物質を顔・身体に浴びせる暴力)のサバイバーへの支援を行うNGOが制作した写真集を分析素材として、「第三世界」女性NGOが産出する視覚的なジェンダー表象の意味作用を明らかにしたい。
【第6分科会 個人研究発表】(マーキュリータワー5階3509教室)
司会:木村涼子
少子化対策としての「官製婚活」――事業の担い手に着目して
斉藤正美
政府・地方自治体は、少子化対策としてお見合い支援、中高・大学生等に「妊娠適例期」を教えるライフプラン事業など幅広い結婚支援を行っている。これら「官製婚活」は若年層の多様な生き方を阻害する一方、セクハラなど人権侵害等のリスクを孕む。本報告では岐阜、富山、東京等での多様な立場の方への聞き取り調査から、特に、自治体や教育現場において民間婚活事業者、医療従事者、大学関係者等が事業の担い手として参入している状況に着目し、その問題を検討する。
候補者における男女均等はどこまで進んだか――自治体議会議員選挙を事例に
大木直子
日本の地方議会では、1980年代以降、女性議員割合が増加傾向にあるものの、地方議会全体としては12.9%(2017年12月末時点)と低く、国際的に見ても女性の参画が大きく遅れている。2018年5月にいわゆる候補者男女均等法が施行されたが、候補者における男女均等はどこまで進んだか。政党公認の候補者の多い道府県議会や政令市議会では政党の候補者リクルートメントがどのように変化したか。本稿は2019年4月の統一地方選挙の自治体議会選挙の速報データを男女別、党派別、自治体レベル別などで整理した上で、政治的リクルートメントの観点から今回の統一地方選挙において男女の候補者数の均等はどこまで達成されたか、どのような候補者が選ばれたか、について考察する。
高等教育機関男女共同参画推進に関する意識・実態調査報告書批判
稲葉久子
本稿は、「京都大学男女共同参画推進に関する意識・実態調査」の「報告書」(2016年)に関する批判であり、本来のアカウンタビリティーが全うされているかのように書かれていることへの警鐘であり、適切な改善努力がされにくいという指摘を行う。目的は「実態を示すこと」でありながら、現状の活動の「根拠の正当化」に至っている。また手段・手法からコンテクスト(i.e.任期付き教職員)が省かれ、実態との乖離が見られる。
男女平等教育と女子校は変動の契機となるか――大学における女子校出身者のジェンダー秩序の解釈と実践
児玉谷レミ
本研究では、学校空間におけるジェンダー秩序に対する「有能な行為者」としての女子生徒・女子学生をより実態に即して把握することを目指す。そのため共学大学に在籍する男女平等教育を受けた女子校出身者たちの語りを山根純佳(2012)のエージェンシー概念に依拠しながら分析する。これによって、ジェンダー秩序を変動しうる存在であるはずの女子校出身者たちが再生産実践へ至る背景を、彼女たちが受けた男女平等教育や大学空間がもつ性質に着目しながら明らかにする。
大学生の強かん神話支持度についての調査結果――「公正な世界信念」による説明の検討に向けて
横山麻衣
強かん神話支持度についての実証的研究は1970年代後半からなされ、強かん神話の支持は公正な世界への信念という概念によって説明がなされてきた。強かん神話とは、男性による女性に対する性暴力を否認・軽視・正当化する,性暴力についての記述的/規範的な考えのことをいう。本報告では、大学生を対象に実施した強かん神話支持度についての調査結果に基づいて、公正な世界への信念による説明の妥当性や課題について報告する。
【第7分科会 パネル報告】(マーキュリータワー4階3406教室)
“政策・被災地・世代・NPOの視点で見つめる女性の活動――社会へ届く活動を目指して(VOL.5)
司会:渋谷典子
「社会へ届く活動」についての予備的考察――NPO法人参画プラネットを事例として
渋谷典子
NPO法施行から20年を経て、NPO法人という組織形態をとり、女性たちが活動を展開する事例が定着しつつある。NPOの存在意義は「市民性」と「事業性」にあり、双方のバランスをとりつつ運営をしていくことが重要となる。本報告では、2005年に設立されたNPO法人参画プラネットの組織運営について、「市民性」と「事業性」の二つの側面から分析しつつ「社会へ届く活動」について検討を進める。
ジェンダー視点で考える「生活時間」――愛知県の女性を対象とした調査実施に向けて
森智香子
労働者の健康や安全を守り、全ての労働者がより豊かな社会生活をおくるうえで必要な「生活時間」の確保について、現在起きている問題とその解決方法を、地域性を考慮しながらジェンダーの視点をもって研究を進めている。具体的には東海地方、主に愛知県の労働環境の特色と女性の働きやすさ/働きづらさについて状況を整理し、検討した上で、今後の問題解決へ向けての取り組みを紹介する。
読書会を通じた若年世代のフェミニズム論考(その2)――経過報告と今後に向けて
米倉清花
本発表では、2015年度日本女性学会大会にてパネル報告した若年女性の読書会活動(2014年~)のその後の状況についての報告を行う。また、読書会活動を見守ってきたおおよそ60代の女性たち、新たに参加した20代女性との交流を通して、読書会がどういう場であるか、そのために必要な条件とは何であったかについて考察を深める。あわせて、読書会で培ったノウハウが一人ひとりの実践として活かされている事例を紹介したい。
女性の災害経験を記録する活動の意義と可能性
堀久美
阪神淡路大震災や東日本大震災等の災害復興における女性の活動の一つに、経験を記録する活動がある。これらの活動のなかで、被災した女性たちや支援者はその経験や思いを語り、それらが防災・復興政策等の議論の根拠となっている。本発表では、女性が経験を語ることの意義と、それが公的な議論の場における言説となり得るプロセスに焦点を当てて検討を行う。
【第8分科会 ワークショップ】(マーキュリータワー4階3405教室)
「クィアと法」の可能性を探究する
綾部六郎・池田弘乃ほか
本ワークショップは「クィアと法」あるいはクィア法理論と呼ばれている学術領域の可能性を探究するものである。報告者たちは『クィアと法』と題する論文集を日本で初めて公刊することで、法実践に内在する異性愛主義・性別二元制を批判するとともに、その理論的・実践的意義を世に問おうとした。本WSでは、こうした問題意識をさらに深めつつ、そこでは論じられなかったことなどを参加者とともに考えたい。