2018年度大会予告
詳しくは 日本女性学会ニュースレター 第143号[pdf]をご覧ください。
会場:武蔵大学 江古田キャンパス
(交通アクセスはこちら)
プログラム
第1日 2018年6月2日(土)
13:00~16:30 大会シンポジウム、その後総会、懇親会
第2日 2018年6月3日(日)
9:30~15:00(昼食休憩を1時間ほど含みます) 個人研究発表、ワークショップ
2018年大会シンポ趣旨
ダイバーシティ推進政策とジェンダー/セクシュアリティの政治
―「LGBT主流化」をめぐって―
シンポジスト: 清水晶子さん、釜野さおりさん、黒岩裕市さん
コーディネーター: 堀江有里、伊藤淑子
趣旨説明
近年、ダイバーシティ推進の動きとして、女性の社会的活用や性的マイノリティの存在の可視化が進みつつある。一方では、地方自治体による同性パートナーシップ証明の発行をはじめ、性の多様性の称揚は急速に広がりつつある。他方では「女性活躍推進法」(2016 年4 月施行)など、女性の社会進出が順調に進められ、さらに推進されているかのような演出もされている。フェミニズムは、「女性の社会的活用」については、政府による私的領域への介入や管理に対する警戒や危惧を表明してきた。しかし、性的マイノリティの可視化とダイバーシティ推進については、ただ“良いこと” として認識する傾向がなかっただろうか。これは、ジェンダーとセクシュアリティをめぐるフェミニズムの政治(ポリティクス)がなかなか連関することなくそれぞれ別個のものであるかのように認識され、分断と緊張を生み出してきたこととも無関係ではあるまい。しかし、現在、これらのダイバーシティ推進が、これまで主流社会において蔑ろにされてきた女性や性的マイノリティの存在の可視化というメリットと同時に、国家を支える基礎ユニットとしての「家族」を措定し、その成員に相互扶助を求めるような、自民党憲法草案24 条「改正」案と並行して提示されていることも忘れるべきではない。このような家族主義的な政策傾向は、男性中心主義を支える異性愛主義という社会規範をより一層不可視化する状況を生み出してもいる。
このような現状を踏まえ、今回のシンポジウムでは、フェミニズムを理論的・実践的に思考されてきた3人を登壇者として迎える。清水晶子さん(フェミニズム理論、クィア理論)には、ダイバーシティ推進政策のなかで、とくに可視性の政治をめぐる陥穽についての英語圏での議論を中心にした理論的考察を紹介していただく。釜野さおりさん(家族社会学)には、性的指向・性自認をめぐる全国調査等のデータを分析することから、ダイバーシティが推進されつつも、人びとの意識のなかに男性中心主義や異性愛主義が根強く存在していることを提示していただく。黒岩裕市さん(日本文学)には、多様な生き方や性のあり方を肯定的に描く近年の文学作品を読みなおすことで、ダイバーシティ推進政策の中で見えにくくなっている問題に光を当てていただく。
今回のシンポジウムでは、社会学・文学・文化理論など学際的に提示されるこれらのリソースから、つぎのような問いをともに考えてみたい。フェミニズムはダイバーシティ推進政策が生み出される状況といかに向き合うべきなのか。さまざまな分断が生み出される現状を踏まえ、女性たちのあいだにある差異を認識しつつ、フェミニズムの政治を構想することは可能なのだろうか。すでにダイバーシティ推進政策の両義性をめぐってはさまざまな場で議論されてきているが、日本女性学会においても、ジェンダーとセクシュアリティの課題を不可分なものとしてとらえる共闘の今日的な意義を探ることとしたい。