アーカイブ | 6月 2006

「暴力AV研究会」報告

日本女性学会の研究会補助制度による補助を受けて、「暴力AV研究会」を2006年6月25日(日)、東京都内において開催した。参加者は8名と少人数だったが、活発な質疑応答がなされ、今日の暴力AV制作現場の実態を知る有意義な機会と なった。
今日、「レイプもの」「監禁もの」と呼ばれる、女性への様々な虐待を映像化したビデオやDVDの存在とその社会的影響について問題視する声が広がりつつある。実際に、AV撮影現場における集団強姦と拷問・虐待によって重い傷害を受け、後遺症によって車椅子生活を余儀なくされた被害女性の訴えによる事件(現在公判中)も起きている。
そこで、そのAV会社のAV制作現場にライターとして居合わせ、壮絶な現場の暴力を目の当たりにして問題提起したMさんの経験、AV女優と呼ばれる女性たちの労働の実態についてお聞きした。現場の映像を使用しての報告により、参加者は構造的な暴力の存在について詳細な事実を知ることになった。 「つぶす」という表現で、「使い古されたAV女優」が暴力AV出演を最後に映像から消えていく現実は、女性の身体と尊厳が搾取されている実情を明らかにした。

また、11月24日(金)午後6時から、新たに、「暴力AV研究会 その2」を企画している。この回では、AV女優派遣事務所のマネージャーから、AV女優と呼ばれる女性たちの派遣労働の実情をお聞きする予定だ。
女性学会会員のみなさまにも是非参加していただき、問題を明らかにしたいと考えている。研究会に参加を希望 される方は、y-nihei●ssjc.ac.jp までお問い合わせください。(メールアドレスの●を@に置き換えてください)

(文責 二瓶由美子)

学会活動の自由と公正のための宣言

2006年6月10日
日本女性学会総会において採択

学会において、それぞれの会員が自由に活動をするためには、他人の権利の侵害、不当な差別やいやがらせ、研究活動上の不正のない、公正で対等な関係が不可欠である。
この宣言は、学会活動を十分に行う環境を作るため、日本女性学会の基本的姿勢を確認するものである。本学会は、「あらゆる形態の性差別をなくし、既成の学問体系をこえた女性学の確立をめざし、そのため、研究および情報交換を行なうこと」(本会規約)を目的としている。会員は学会の目的に反する活動をしない。また、あらゆる形態の差別をしないことに加え、今日新しく提起されているハラスメント行為についても視野に入れ、これを行わないことを確認する。

  1. 会員は、人種、民族、国籍、宗教、障がい、門地、年齢、容姿、性別、性自認、性的指向、婚姻上の地位、子どもの有無、その他あらゆる形態の差別をしない。
  2. 会員は公正に研究、調査活動を行う。調査対象者、研究協力者などのプライバシー権や人格権を尊重し、不利益を与えることをしない。
  3. 会員は、学生や院生、オーバードクターやポストドクター、研修員等も含め指導している者、雇用している職員や同僚など誰に対してもセクシュアル・ハラスメントおよびアカデミック・ハラスメントをしない。
  4. 会員は、直接・間接の監督・指導・評価などにおける職業上の地位を利用した搾取をしない。
  5. 会員は、公正に学会活動を行う。学会活動には、学会誌紙の編集発行、大会、研究会の運営や発表、参加などの他、学会を運営するあらゆる事柄を含む。
  6. 学会は、この宣言を実現するため、必要に応じて規程およびガイドラインを設ける。

日本女性学会・ジェンダー研究会編 『男女共同参画/ジェンダーフリー・バッシング−バックラッシュへの徹底反論』

書籍ご案内

日本女性学会・ジェンダー研究会編
『男女共同参画/ジェンダーフリー・バッシング−バックラッシュへの徹底反論』

出版社の書籍紹介ページ

近年、男女共同参画やジェンダーフリー、性教育などが批判されています。「バックラッシュ」や「バッシング」と呼ばれるこれらの批判は政府やメディアに影響を与え、ジェンダー/ジェンダーフリーへの言葉狩り、性教育の内容への介入などが起こっています。このような状況の中で行政担当者・教育関係者や、これまでさまざまな場で男女共同参画/ジェンダーフリーにかかわってきた人々は、まっすぐにものが言えないようになってきています。

そこで、日本女性学会内部にできたジェンダー研究会では、男女平等やジェンダーに関わる問題や質問にわかりやすく答え、バックラッシュ派に反論していくために本書を企画しました。執筆者は、主にジェンダー研究会に参加した研究者です。私たちは、多くの人に男女共同参画/ジェンダーフリーについて正しく知ってもらうこと、そして、バックラッシュ派のうそやごまかしにだまされず、みんなが堂々と自分の思いや意見を言える社会を作っていくことを願っています。

ジェンダーの定義や男女平等、男女共同参画社会をめぐっては、専門家の間でも多様な見解があります。したがって、本書は、執筆者全員の意見が完全に一致して書かれているわけではありませんし、日本女性学会の統一見解が示されているわけでもありません。執筆者は、担当した項目を自分の意見で書いています。執筆者共通の基本的な視点は、性差別のない、ジェンダー平等が実現される社会、多様な人々が多様なままで認められ、生きていける社会を作ろうという願いです。

本書の構成は、各質問に答えていくQ&A形式を中心としていますので、どこからでも読むことができます。また、最初に「ジェンダー」に関する基本的なスタンスをまとめましたから、適宜参照してください。Q&Aの後ろには、ジェンダー関連用語の基本的意味やバックラッシュの背景、政府の「ジェンダー」及び「ジェンダーフリー」に対する見解、参考文献、資料などを掲載しました。参考にしてください。

日本女性学会・ジェンダー研究会編集委員会