NewsLetter 第100号 2004年11月発行

日本女性学会NewsLetter

(*会員に送付しているペーパー版の「学会ニュース」とは内容が一部異なります)

女性学会ニュース第100号[PDF] 2004年11月発行


学会ニュース
日本女性学会 第100号 2004年11月

日本女性学会ニュースレター100号記念
学会ニュース100号までの歩み

日本女性学会のニュースレターは、今号でちょうど100号となります。そこで記念企画の一つとして、バックナンバーから毎年の大会テーマと開催地を拾い出してみました。1980年2月に第1号を発行して以来、現在までの過程からは、日本の女性学がそのときどきに直面していた課題や問題意識が浮かび上がってくるのではないでしょうか。
なお、バックナンバーの調査にあたっては、内藤和美さんのご協力を得ました。貴重な資料をご提供いただき、感謝いたします。

1980年5月 「女性学の出発」 法政大学
1981年6月 講演・ダグラス・ラミス「日本文化と女性」 法政大学
1982年6月 講演・水田宗子「女が自分を語る時:宮本百合子とボーボワールの自伝小説を中心に」 神戸女学院大学
1983年6月 「フェミニズムと学問」 国立婦人教育会館
1984年6月 「女性と宗教」 早稲田大学
1985年6月 「いわゆる“性差”と女性解放:近代社会にどうだまされてきたか」 名古屋勤労婦人センター
1986年6月 「日本の文化的土壌とフェミニズム:フェミニズムを阻むものは何か」 国立婦人教育会館
11月 「日本的土壌とフェミニズム:女の〈不払い〉労働を考える」 京都市社会教育総合センター
1987年6月 「日本の文化的土壌とフェミニズム:女のセクシュアリティー(生と性)」 法政大学
11月 「日本の文化的土壌とフェミニズム:今、女性学を見直す」 京都市看護短期大学
1988年6月 「日本の文化的土壌とフェミニズム:視覚イメージの政治学」 国立婦人教育会館
11月 「日本の文化的土壌とフェミニズム:フェミニズムの原点に立ち戻る」 大阪女子大学
1989年6月 10周年記念対談「フェミニズムをどう生きるか:駒尺・藤枝、大いに語る」 法政大学
12月 「女性の人権と性差別」 京都精華大学
1990年6月 「生殖の政治学」 横浜女性フォーラム
12月 「女性への暴力:その構造を問う」 国立婦人教育会館
1991年6月 「均等法5年:女性は働きやすくなったか」 東京女子大学
11月 「従軍慰安婦・キーセン観光・在日韓国朝鮮人女性:アジア女性会議へ向けて」 京都市国際交流会館
1992年6月 「アジアの女性学を創る」 早稲田大学
11月 「フェミニズムと表現の自由」 京都精華大学
1993年6月 「夫から妻への暴力:婚姻関係の内外で」 せたがや女性センター
11月 「女子学生はなぜ就職できないか? 就職差別の現状と構造」 京都産業大学
1994年6月 「フェミニズム文学批評に何ができるか」 豊島区 立男女平等推進センター
11月 「女性が問う“家族法”:戸籍・別姓・非婚」 名古屋市女性会館
1995年6月 「フェミニズムと国家:おんなと戦争責任」 国際基督教大学
11月 「多様なフェミニズムと私」 追手門学院大学
1996年6月 「女と生殖:その欲求・技術・政治」 和光大学
11月 「フェミニズムと政策決定過程」 愛知淑徳大学
1997年6月 「何のための女性学か:日本の女性学20年の「現在」を問う!」 かながわ女性センター
11月 「きしむ「家族」:制度と感情の乖離」 長岡短期大学
1998年6月 「自己決定という「フィクション」:生・性・からだ」 慶應義塾大学
11月 「専業主婦という「選択」:その是非または幸、不幸」 北九州市立女性センター・ムーブ
1999年6月 「20世紀の女性表現を考える」 城西国際大学
11月 「働きたい、働けない:派遣・パート労働とリストラのいま」 大阪府立ドーンセンター
2000年6月 「フェミニズムと政治権力」 東京大学
2001年6月 「女性学の制度化をめぐって」 千葉市女性センター
2002年6月 「ポルノグラフィーの言説をめぐって」 エル・パーク仙台
2003年6月 「「男女共同参画社会」をめぐる論点と展望」 十文字学園女子大学
2004年6月 「ウーマンリブが拓いた地平」 鳥取県 男女共同参画センター
(荻野美穂)

ヌエック問題、日本女性学会幹事会も、要望書を提出しました

新聞等でご存知のことと思いますが、学会としての対応について、少し経過を説明させていただきます。このかん、ヌエックの名で慣れ親しみ、日本女性学会も浅からぬ関係にあった国立女性教育会館が、行革推進の中での独立行政法人の統廃合の流れを受け、独自施設としての存続が危ぶまれる状況にあるという問題が急浮上してきました。22法人を8法人に統合し、国立女性教育会館はオリンピック記念青少年総合センター、青年の家、少年自然の家と統合すると提案されたのです。またまた、「女・子ども」問題は一緒、の発想なのでしょうか。

この事態を受け、まず、独立行政法人国立女性教育会館の運営を考える会が、個人の連名で、9月27日に文部科学大臣、官房長官、総務大臣、行政改革担当大臣、「独立行政法人に関する有識者会議」「規制改革・民間開放推進会議」「総務省政策評価・独立行政法人評価委員会」「自民党行政改革推進本部メンバー」などに要望書を出したということです。

女性学・ジェンダー関連の国内の学会・研究会がどのような対応をすべきなのか、いろいろやり取りがありましたが、統一的な書面による要望ではなく、それぞれの学会・研究会の歴史や活動を踏まえて、それぞれの会の責任において要望書を提出することと、提出時期の目途を10月18日に予定されている「有識者会議」に向けてということで、上記の関係メンバーあてに要望書を提出することとなりました。

日本女性学会は、急を要する事態でもあり、大会も終えたばかりで会員全体の総意を確認する手立てがない中では、「13期幹事会」名で要望書を届けるのが一番現実的であろうということを幹事会内で確認し、以下の要望書を作成し、郵送で関係者に送付した次第です。

幹事会としては、今後も必要に応じて関係方に働きかけをしなければならない場面もあるかと考えておりますが、是非、皆様も事態の成り行きを関心をもって見守っていただくと共に、それぞれの場面からなしうる働きかけをお願いいたします。

(金井淑子)
平成16年10月15日

独立行政法人国立女性教育会館の統合等に関する要望書

日本女性学会幹事会  代表幹事
金 井 淑 子

私たち、日本女性学会は、1979年、日本の「女性学研究」を推進することを目的に、さまざまな学問研究分野からの研究者をネットワークすることによってスタートした研究者グループです。発足後は、会員は研究者にとどまらず学校教育・社会教育の現場さらに地域で学習を深めたリーダー的存在まで広がりをもち、現在、会員730名を擁する学会に発展し、日本学術会議の登録団体にもなっています。日本には、女性学研究の目的をもつ研究者ネットワークは、日本女性学会のほかにも日本女性学研究会、女性学研究会、国際女性学会がありますが、1978年にオープンした国立婦人教育会館(現・独立行政法人・国立女性教育会館)の存在は、これらの4研究団体を始めとする国内の研究者の情報交流とネットワークの場として大きな役割を果たしてきたことはいうまでもありません。

とくに会館が80年代以降実施してきた「高等教育機関における女性学開設状況」調査が、日本の女性学教育推進と女性学研究の裾野の拡大に果たした意味は少なくないと考えております。同会館がまさに国内外の女性学教育のナショナルセンターとして4半世紀にわたり展開してきた研修・交流・調査研究・情報などさまざまな事業が、日本の女性のエンパワーメント教育に果たした意味ははかりしれません。私ども日本女性学会のメンバーは、同会館の主宰する講座や国外からゲスト講師を迎えてのシンポジウムの開催において、講師、助言役などの任を果たしたことも多々あり、その意味で、会館と共に日本の女性学推進の一翼を担ってきたという自負を抱いてもおります。

日本社会も男女共同参画社会基本法の制定を経て、21世紀の日本社会の福祉や教育など、新しい社会システムへの構造的転換を模索する取り組みが問われている中で、さらにまた国際化・グローバル化する世界における日本社会の女性の役割がこれまで以上に問われている中で、国立女性教育会館の女性のエンパワーメント教育のナショナルセンターとしての比重もまたこれまで以上に大きくなっていると考えております。

さて、そのような中にあって、今回、各方面で行われている独立行政法人の組織、事務の見直しに関連して、国立女性教育会館を国立オリンピック記念青少年総合センターなどの青少年教育関連法人と統合する案が検討されていることを知り、たいへん驚きかつ憂慮しております。昨今の日本社会の、行財政改革・構造改革の流れの中では、独立行政法人の組織、事務の見直しが避けがたいことと承知しておりますが、それでも、国の女性教育推進のナショナルセンターとしての国立女性教育会館の存在が見えなくなるような方向での統合計画案には、どうしても納得しがたい思いを強めております。

なによりも、日本社会が、国際女性年およびそれに続く国連女性年の10年とその国内行動計画を受けて基本法まで到達した女性政策の成果を国際的な場面にアピールし、「平和と平等」実現に向けた国際社会の取り組みに日本の女性たちが参画していく、その活動と情報の国際社会からの受発信のナショナルセンターとしての同会館の存在が見えなくなることは、日本の女性政策の後退の印象を各国に与えかねないのではないかという危惧を抱いております。

男女共同参画社会の実現に向けて、むしろこれからこそ、女性のエンパワーメント教育の意味が新たに問われているのだと考え、日本女性学会も女性学推進の観点からこの流れに寄与したいと考えております。そのためにも国内外の女性学研究者の交流と情報の受発信、ネットワークの拠点となる国立女性教育会館がいま以上に必要であり、本来の目的を明確にした単独法人として、今後も政府責任のもと存続することを強く願い、さらなる発展を期待するものです。

以上、ご賢察のうえ、ご高配くださいますようお願い申し上げます。

お知らせ

◇ジェンダー史学会設立のお知らせ

本年12月、人類の歴史にかかわる諸学問領域をジェンダーの視点から深く研究するための学際的研究団体として、ジェンダー史学会が設立されます。趣意書には、「歴史・文学・言語・教育・宗教・思想・美術・音楽・演劇・経済・社会・民俗・政治・法・科学等々、多くの分野を含み、学際的双方向性において、歴史におけるジェンダーの包括的研究を行うこと」、さらに「人種・民族、階級など他の諸要素とジェンダーとの諸関係を構造的に明らかにすること」が、目標としてかかげられています。

以下のとおり、設立大会シンポジウムが開催されます。詳細については、下記にお問い合わせください。
12月4日(土) 中央大学駿河台記念館281号室
記念講演 13:00〜13:40
アン・ウォルソール「ジェンダーの政治学」
シンポジウム 14:00〜17:00
「今、なぜジェンダー史学か?」
大橋洋一、服藤早苗、前山加奈子、大森真紀、若桑みどり
問い合わせ先:中央大学経済学部 長野ひろ子研究室
FAX:0426-74-3425
Email: genderhistory1●khh.biglobe.ne.jp (●を@に書き換えてください)
http://www7a.biglobe.ne.jp/〜genderhistory/

◇第9回国際学際女性会議開催のお知らせ

第9回国際学際女性会議(WW05)が、2005年6月19日から24日まで、韓国ソウルの梨花女子大学で開催されます。会議全体のテーマは「地球を抱きしめる:東と西、北と南」で、その下に20の多彩なサブ・テーマが用意されています。
参加申し込みの締め切りは2004年12月31日です。
申し込み方法、そのほか詳細については、
www.ww05.org
をご参照ください。

◇お茶の水女子大学21世紀COEプログラム

「ジェンダー研究のフロンティア」
主催シンポジウムのご案内
第1回F−GENSシンポジウム
「グローバル化、暴力、ジェンダー」
12月11日(土)
午前の部 基調講演
「ジェンダー法学と暴力の再解釈」戒能民江
午後の部 分科会A
「いかにして権力はパフォームするのか」
分科会B
「パネル調査に見る東アジアのジェンダー格差」
12月12日(日) シンポジウム
「再生産領域における〔複数の〕グローバル化と暴力:
アジアにおけるジェンダーの論題をめぐって」
会    場:お茶の水女子大学
(詳細は以下にお問い合わせください)
問い合わせ先:電話 03-5978-5547
FAX 03-5978-5548
URL: http://www.igs.ocha.ac.jp/f-gens/
Email: f-genszn●cc.ocha.ac.jp (●を@に書き換えてください)

◇ホームページ検討ワーキング・グループからのお願い

幹事会内に、学会ホームページ(以下HP)の将来的なあり方を検討するワーキング・グループ(以下、WG)を設置しました。メンバーは、幹事の伊田広行、釜野さおり、佐藤文香、武田万里子で、今年度中に一定の結論をえることを目標とします。

現在、学会のHPは、会員向け情報媒体であるニュースレターに掲載された情報を基本に、年数回更新し、5万円程度の経費をかけています。具体的には、設立趣意、規約、入会案内、大会案内、学会誌宣伝、研究会案内、科研費講座案内、学会関与のイベント案内などを掲載し、学会の外部への宣伝機能を担っています。

しかし、情報化の進展のなかで、学会のHPは将来的にどういう機能をもつべきなのか、何のために、誰を対象に、どういう情報を掲載するのか、本格的な検討が必要と考えられます。英文版の必要性の検討も必要でしょう。どのような実施体制をとり、どの程度の経費をかければそれらを実現できるのかも、問題です。

「こんなHPにしたい」「こういう情報をのせよう」「こんな機能がほしい」という要望、すれば実現できる」というお知恵を、もよりのWGメンバーもしくは幹事までお寄せください。

(文責・武田万里子)

次回日本女性学会大会予告

時 期:2005年6月11日(土)、12日(日)
場 所:横浜国立大学( 横浜市保土ヶ谷区常盤台 )
テーマ:「フェミニズムと戦争」(仮題)
* 詳しくは次号ニュースレターでお知らせいたします。