日本女性学会NewsLetter
(*会員に送付しているペーパー版の「学会ニュース」とは内容が一部異なります)
女性学会ニュース第126号[PDF] 2012年11月発行
6月2日(土)、3日(日)は、大正大学にて2012年度日本女性学会大会が開催されました。19日に行われた大会シンポジウム「フェミニズムと「母」─異性愛主義と「女」の分断」では、2011 年3月11 日の東日本大震災以降、マスメディアにおいて、 復興支援活動や放射能被曝から子を守ろうとする活動を担う女性たちの姿が「母」のイメージと強く結びつけられる機会がより多くなってきているという現状を踏まえて、3人のパネリストの方に発表いただきました。加納実紀代さんは、近代国民国家の成立にともなって誕生した「母」役割がどのように変容してきたのか、歴史的理論的検討を、松本麻里さんは、反/ 脱原発運動の担い手としての母親、そしてその表象についてフェミニズムはどうとらえるべきなのか、水島希さんは、母親たちの市民運動が、科学的データの収集や地域の放射線量測定、情報公開、行政や教育機関との交渉といった実践的活動を行ってきたことがどのように解釈されうるのかについて、発表してくださいました。今日的なテーマであり、またパネリストの方々が具体的な問題提起をしていただいたこともあり、活発な議論が行われました。シンポのもともとの問題意識であった異性愛主義と「女」の分断について今後も検討していくことは継続的な課題だと思います。
シンポジウムの後には総会もあり、16期幹事会による活動報告が行われ、議論を経て承認されました。今年度から発足した少額研究活動支援の対象者が発表され、若干の規約の改正が行われました。また今後研究会を充実させていくことが確認されました。
3日は、午前に4分科会で報告が行われました。だいたい1報告30分以上の持ち時間があり、じっくりとした議論を交わされ、大いに盛りあがったようです。午後はワークショップ3件が開催されて、実践的な交流の場になりました。
全体を通じて有意義な学会大会であったということができるでしょう。会場を提供してくださった大正大学に感謝するとともに、来期の大会も充実させていくよう、17期幹事会も準備を進めてまいります。
千田有紀
社会学・ジェンダー理論
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日本女性学会も17期をむかえました。学会では、今までの伝統を引き継ぎながらも、少額研究活動支援制度や年会費の収入スライド制などの新しい試みも行われてきています。今期は研究会に力を入れながら、日本女性学会らしい活動ができればよいなと考えています。
(代表幹事)
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北仲千里
ジェンダーの社会学・ハラスメント問題研究
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16期に引き続き幹事ということで、選挙管理や大会時の会計などを担当します。 できるだけ多くの会員に様々な形で参加していただけるような企画や運営を目指したいと思います。 (代表代行・大会会計・選管)
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荒木菜穂
社会学・日本のフェミニズムと社会意識
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第17期では吉田幹事とともに会計を担当させていただきます。立場の異なる様々な女性学の、分断ではなく、ともに考え、交渉、調整、納得できる場の持続のためのお手伝いを、微力ながらさせていただけると幸いです。活動を通じ、皆様とお話を交わし、学ばせていただくことを楽しみにしております。よろしくお願い申し上げます。
(会計)
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飯田祐子
日本近代文学 ジェンダー批評
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はじめて幹事をさせていただきます。ニューズレターの担当となりましたので、過不足無く情報をお伝えできるよう努めたいと思います。ジェンダーという言葉と出会ってからはや二十年、自分自身もいろいろと変化してきました。今はどこにどのような視点が必要なのかを具体的に考えていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
(ニューズレター)
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伊田広行
労働組合、デートDV
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アカデミズムの枠を超えて発信する学会になってほしいと思っています。また大きな枠組みでバランスよく考える研究者が増えてほしいです。自分が作るフェミなので、他人事のようにフェミ批判するのは好きじゃないです。
(ニューズレター)
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伊藤淑子
アメリカ文化、アメリカ文学
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前期に引き続き、編集を担当させていただきます。2012年度の会場校をお引き受けし、貴重な体験もさせていただきました。会員歴は割と長いのですが、学会に積極的に関わらせていただくようになったのは最近です。「女性学」が「古風」な名称と若い学生に響くようになったことこそ、女性学の成果の証だと思います。微力ですが、幹事としての責任を果たし、私もインスパイアされたいと思っています。よろしくお願いいたします。
(編集)
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井上輝子
女性学・社会学・メディア研究
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最後のお勤めと思って、久々に、幹事に戻ってきました。若い方々との交流を楽しみにしています。女性が生きづらい社会を変えるために、女性学の旗を掲げる学会の存在意義は、まだまだあると思っています。70の手習いで、HPを担当しますので、よろしく。
(HP、メールニュース)
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金井淑子
社会倫理学、フェミニンの哲学
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立正大学哲学科で教員をしております。幹事会はだいぶご無沙汰でしたし、現在の講義担当科目にも女性学関係ではないので、幹事会活動から女性学の最新の状況を知りうる機会になればと思います。今期の幹事会では「研究会活動」を担当させていただきます。 各地で研究会がもたれ、ニューズレターにその報告を寄せていただくことで、年一回の大会では会員研究活動の受け皿になるのが難しい現状をカバーできたらと考えております。企画をどしどしお寄せください。 (研究会・少額研究活動支援)
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田代美江子
近現代日本における教育をジェンダー・セクシュアリティの視点から研究。日本性教育史、性教育実践研究、性の多様性と教育など
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これまで多くのことを学ばせていただいてきた学会に、今回、幹事として、微力ではありますが貢献できることをうれしく思います。何もわからない状況ですが、これまでの活動経験を少しでもいかせればと考えています。私自身は、性教育の歴史研究を中心にしてきましたが、教育とジェンダー・セクシュアリティを結びつけたところから、女性学の課題を発信できればと思っています。
(学会誌編集)
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田中かず子
ジェンダー社会学、ケアワーク
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近年急速に雇用破壊が進み、働いても貧困というワーキングプアの問題が深刻になっています。縦横に分断され、ゆるやかにつながることさえ困難な状況において、私ができることはどのようなことなのか、しっかり考えたいと思っています。
(庶務)
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田間泰子
家族社会学・ジェンダー論
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学会は研究活動の支えになる大切な存在ですが、会員のボランティア的な働きによって維持されています。私は、お金の計算は下手だしネット環境も使いこなせませんが、この機会に何か少しでも会員のみなさんのお役に立てれば、幸いです。
(研究会・少額研究活動支援)
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中村桃子
ことばとジェンダー
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第17期幹事としてメールニュース担当をさせていただくことになりました。初めての幹事ですが、少しでも日本女性学会に貢献できるよう全力でがんばります。学会での活動を通し、いろいろな研究分野の方々と交流を深めたいと思っています。どうぞよろしくお願い申し上げます。
(メールニュース・HP)
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林千章
アクティヴィズム、フェミニズム批評、フェミニスト倫理学
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委嘱幹事として学会誌の編集を担当することになりました。学会の創設に携わられた故・駒尺喜美さんや故・藤枝澪子さんに大阪で新聞記者をしていた時代に学んだこと、Vol. 8の編集委員を務めた時の土台に一本の杭を打ち込むような気持ち、それらが私の中で発酵して学会というパン種の一部になれば、と思います。
(学会誌編集)
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古久保さくら
ジェンダー平等教育、近現代女性史
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女性学会幹事は初めてなので、少々不安ではありますが、庶務担当として円滑な学会運営ができるよう、ガンバリたいと思います。階層・性的オリエンテーション・エスニシティなどの違いによって「女性」が一枚岩ではないことは従前から言われ続けておりますが、様々な立場の女性たちが参加しやすいような女性学会であるように微力ながら努力したいと考えています。
(庶務)
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吉田あけみ
家族社会学
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二期目に入って少し勝手がわかってきました。今期は、会計を担当いたします。最も不得意な分野のように思いますが、何事も経験と考え、一所懸命つとめてまいりたいと思っています。どうぞよろしくお願い申し上げます。
(会計)
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日本女性学会では、常勤ないし正規雇用契約をもたず、研究財源の確保に困難をかかえている会員の研究活動を支援することを目的に、「少額研究活動支援」を創設しました(2011年度総会承認)。要件に該当する会員を対象に、研究活動支援金を支給します。下記の通り、2012年度の支給対象者を募集します。ささやかな活動ですが、ぜひ活用ください。
内 容
対象者の日本女性学会の趣旨に沿った活動に対し、1人あたり3万円の研究活動支援金を支給する
対 象
2012年4月1日現在、常勤ないし正規雇用契約をもたない会員 10名
応募要件
(1) 前年度までの会費が納入されていること
(2)日本女性学会会員の会費区分6000円の者
(3) 2012年4月1日現在、常勤ないし正規雇用契約下にないこと
(4)日本学術振興会特別研究員でないこと
応募方法
別紙1 応募用紙に記入のうえ、日本女性学会事務局宛郵送ください
応募締切
2012年4月30日(月)着分
対象者の決定
支援対象者は、使途、科学研究費補助金補助金の申請しやすさをはじめ研究活動財源の状況等を考慮して幹事会で協議し、総会の承認を経て決定します。
報 告
受給者は、受給から1年以内に、支援金を活用した研究活動について、別紙2により報告頂きます。記入のうえ、日本女性学会事務局宛郵送ください。
◆応募用紙 別紙1[Microsoft Word(.doc)形式]|[PDF形式]
■報告用紙 別紙2[Microsoft Word(.doc)形式]|[PDF形式]
1.目 的
常勤ないし正規雇用契約をもたず、そのために研究財源の確保に困難をかかえている会員の研究活動を支援することを目的とする。
2.内 容
毎年、常勤ないし正規雇用契約をもたない会員10名を対象に、その日本女性学会の趣旨に沿った活動に対して、1人あたり3万円の研究活動支援金を支給する。
3.募 集
募集は以下の通り行う。
(1) 募集は毎年1回(4月頃)実施する。
(2) 募集、募集期間、その他必要事項は、日本女性学会ウェブサイト、学会ニュース、メールニュースによって周知する。
(3) 希望者は、所定の応募用紙に必要事項を記入し、日本女性学会事務局宛郵送で提出する。
応募用紙は日本女性学会ウェブサイトに備える。
4.応募要件
応募要件は以下の通りとする。
(1) 前年度までの会費が納入されていること
(2)日本女性学会会員の会費区分6000円の者
(3)常勤ないし正規雇用契約下にないこと
(4)日本学術振興会特別研究員でないこと
5.対象者の決定
支援対象者は、使途、科学研究費補助金の申請しやすさをはじめ研究活動財源の状況等を考慮して幹事会で協議し、総会に諮って承認を得る。
なお、応募者に現役幹事が含まれているときは、当該幹事は協議に参加しない。
6.報 告
受給者は、受給から1年以内に、支援金を活用した研究活動についての報告を行う。報告用紙は日本女性学会ウェブサイトに備える。
フェミニズムには積み残してきた課題が多くある。そのひとつに「母」をめぐる事柄を挙げることができるのではないだろうか。2011年3月11日の東日本大震災以降、マスメディアにおいて、復興支援活動や放射能被曝から子を守ろうとする活動を担う女性たちの姿が「母」のイメージと強く結びつけられる機会がより多くなってきている。いままでも存在した「女=母」というイメージがより一層突きつけられるなかで、女たちのあいだに温度差や乖離、そして分断がもたらされている。
たとえば、これまでのフェミニズムのなかには、「産む性」の立場からの主張を本質主義的な「母性礼賛」と見なし、ジェンダー構造の再生産に加担する危険性をはらんでいるとみる批判もあった。たしかに、役割として「女」に 押し付けられる「母」のイメージは、異性愛主義によって構築されてきたものでもある。しかし、とりわけ、東日本大震災以降の現状に照らし合わせると、「母」の立場に依拠した主張をそのようにしか位置づけないことで、女性間にあらたな分断が生み出されているのではないだろうか。
今回のシンポジウムでは、「母」をめぐる問題に対して本質主義か否かの議論に陥りがちであったフェミニズムを批判的に検討する。そしてそれは、「母」や「女」といったカテゴリーと、個人の多様性を尊重することの矛盾について向き合いきれてこなかったという課題を、反省とともに再考する試みでもある。
シンポジスト:加納実紀代さん、松本麻里さん、水島希さん
コーディネーター:荒木菜穂、西倉実季、福嶋由里子、堀江有里
タイトルと発表の概要(200 字程度)・発表のカテゴリー(個人研究発表、パネル報告、ワークショップのいずれか)・発表時に使用する機材(希望にそえない場合もあります)を記載して3月30 日(金)24 時までに、ニュースレター担当の青山薫(kaoruAT[@マークに変えて送信]jca.apc.org)・西倉実季(mnishikuAT[@マークに変えて送信]mail.doshisha.ac.jp)までメールでお申し込みください。受信トラブルを避けるため、両名にお送り願います。
ワークショップは、参加者との協同作業でテーマを発展させていく取り組みであり、個人研究発表とは性格の異なるものです。原則として複数の発表者がひとつの分科会全体(2時間ていど)を担当していただきます。
個人研究発表はひとつの分科会で3、4人の方が発表をしていただきます。この組み合わせは通常応募状況によって幹事会で決め司会も幹事会から出しますが、あらかじめ共通テーマの方々3名以上が集まり、共同でパネル発表に応募していただくことも可能です。その場合、公平な各発表時間の配分と質問の時間を十分とることにご留意いただき、テーマ、時間配分、司会者などを申込者が決めてからご応募ください。
日時:2012年3月31日(土) 11時〜13時
場所:大正大学1号館2階大会議室
所在地:東京都豊島区西巣鴨3-20-1
・都営地下鉄三田線 西巣鴨駅下車 徒歩2分
・埼京線 板橋駅東口下車 徒歩10分
・都電荒川線 新庚申塚駅又は庚申塚駅下車 徒歩7分
詳しいアクセスは、大正大学 アクセスマップ をご覧ください。
東日本大震災に寄せて | |
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まぼろしの岩手2011年度大会と、「すくいとる言葉」としての女性学 | 海妻径子 |
特集 「ライフスタイルに中立な社会政策を考える」 | |
特集にあたって | 北仲千里 |
ライフスタイルの公正と家族 | 千田有紀 |
「ワーク・ライフ・バランス」をめぐる二つの世界 | 萩原久美子 |
「子ども手当」の変質・解体と維持されるジェンダー・バイアス | 北明美 |
【投稿論文】 | |
「性同一性障害者」の自己掲示の変容 | 石井由香理 |
介護職の性別職域分離 | 島原三枝 |
1970年代の障害者運動における女性障害者の意識変容 | 二階堂祐子 |
【研究ノート】 | |
男性性間の階層的関係とジェンダー秩序 | 川口遼 |
アメリカ初等中等教育における男女共学・別学論争をめぐって | 三宅えり子 |
【書評】 | |
『依存と自立の倫理――<女(わたし)/母>の身体性から』 | 高原幸子 |
『大学生と語る性――インタビューから浮かび上がる現代セクシュアリティ』 | 富永貴公 |
『マザー・ネイチャー――「母親」はいかにヒトを進化させたか』 | 大久保佳美 |
A5判 並製 定価2571円(本体2381円+税)
ISBN 978-4-88385-144-7
Journal of Women’s Studies Association of Japan
Edited by the Editorial Committee of the Women’s Studies Association of Japan
Special Issue: Can Social Policy Be Neutral to Diverse Lifestyles? | |
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The Fairness of Life Styles and the Modern Family | SENDA Yuki |
Two Worlds of “Work-Life Balance” | HAGIWALA Kumiko |
An Analysis of the Deterioration of the Child Allowance Policy in Japan from the Perspective of Gender | KITA Akemi |
Articles: | |
Constructing the Relationship between Transgenders and the Sexual Majority: From the Stories of Transgender Group Organizers | ISHI Yukari |
Care Workers and Gendered Jobs: A Study of the Mechanisms of Men’s Superiority at Work in Women’s Jobs | SHIMAHARA Mie |
The Transformation in Awareness among Disabled Women during the Disabled Persons’ Movement of the 1970s: Focus on “Fujin-bu (Women’s Division)” of Kanagawa Joint Association of Aoi-shiba | NIKAIDO Yuko |
Research Note: | |
The Hierarchical Relationships among Masculinities and Gender Order: Rethinking the Concept of Hegemonic Masculinity | KAWAGUCHI Ryo |
Debate over Single-sex and Coed Education in the Primary and the Secondary Education in the United States | MIYAKE Eriko |
Published by The Women’s Studies Association of Japan, Tokyo, Japan
2012年2月13日付で会員の皆様に名簿とともに送付させていただいた「日本女性学会第17期選挙選出幹事選挙 投票用紙」に印刷された会員の名前に間違いがありました。
訂正版の投票用紙を送付させていただきますので、こちらの投票用紙を使って、投票していただけますようお願い申し上げます。訂正版の投票用紙には「訂正版」の文字を囲みの形で入れております。
すでに投票された方には大変お手数をおかけいたしますが、訂正版の投票用紙を使って、再度投票していただけますよう重ねてお願い申し上げます。また、投票の重複等の問題を避けるために、訂正前の投票用紙を用いてなされた投票は無効とさせていただきます。