NewsLetter 第93号 2003年2月発行

日本女性学会NewsLetter

(*会員に送付しているペーパー版の「学会ニュース」とは内容が一部異なります)

女性学会ニュース第93号[PDF] 2003年2月発行


 

学会ニュース
日本女性学会 第93号 2003年2月

 

次回大会予告

 

2003年6月7日(土)・8日(日)

於 十文字学園女子大学
(埼玉県新座市 地図はhttp://www.jumonji-u.ac.jp/univ.htm参照)

シンポジウム:「男女共同参画社会」をめぐる論点と展望

大会日程

一日目 6月7日
13:00〜16:00 シンポジウム
その後総会、懇親会
二日目 6月8日
10:00〜12:00 個人研究発表
13:00〜15:00 ワークショップ
*個人研究発表、ワークショップの申し込み受付中!
タイトルと概要(200−400字程度)を2月末日までにニューズレター担当の牟田、伊田までメールかファックスでお願いします。

大学院生等への旅費補助について

ワークショップ、個人研究発表で報告する学生・院生(OD、研修員等を含む)、本務校を持たない非常勤講師に対し学会から旅費の補助をします(総額10万円を、人数と距離に応じて配分しますので、各人どれくらいの額になるかは未定です)。
報告の応募の際に、「旅費補助希望」の旨申し出て下さい。
ただし、今回は埼玉県での開催ですので、関東地方の方は対象外です。

大会シンポジウムのねらい

パネリスト(敬称略):船橋 邦子、亀田 温子、伊藤 公雄ほか未定

「男女共同参画社会の形成」が政策課題として市民権を得、主流化しつつある一方、これを批判し反対する動きも顕在化していることを憂慮して、シンポジウムでは、このテーマを取り上げます。そのため、2002年10月からプロジェクトチームを立ち上げ、研究会を開いてきました。
1999年の男女共同参画社会基本法、2001年の内閣府男女共同参画局の設置、いわゆるDV法の制定など、不十分ながら日本でもジェンダーの主流化が始まってきました。2000年から始まった地方自治体の男女平等条例の制定は、2002年12月末には40都道府県98市区町になりました。条例制定は、急激な勢いで全国に広がってきました。基本法には盛り込まれていない特徴のある積極的改善措置や苦情処理機関などを盛り込んだ条例も少なくありません。ところが、2001年の大阪府の条例制定あたりから、反動的な動きが強くなってきて、名称の「男女共同参画推進条例」とは全く逆行したこれまでの固定的性別役割分業観を賛美するような条例まで宇部市で制定されました。
反動派は、千葉県、千葉市、さいたま市、前橋市、仙台市などで、次々と行動を起こしています。幸い千葉市は全国の女性からの署名運動などが効を奏して、反動派による改悪をおしとどめましたが、千葉県は危機的な状況にあります。
反動的な動きは、男女共同参画社会基本法や条例に対して始まったことではありません。反動派の論客は、母体保護法改正(悪)問題、夫婦選択別姓問題、新しい歴史教科書を作る会などともオーバーラップしています。憲法改正(悪)や有事法制の推進者などとも繋がっているようです。
現在のフェミニズムに対する攻撃は、基本法や条例だけではありません。ジェンダーに敏感な家庭教育のためのパンフレットや性と生殖の健康と権利を具体的に述べた性教育パンフレットも攻撃を受け、発売禁止などの措置などが出ております。
日本女性学会大会シンポジウムでは、特に条例と教育に焦点を当てて、情況と議論を整理・精査し、展望について議論をします。
会員だけではなく幅広い非会員の参加も歓迎します。

会場へのアクセスと宿について

JR武蔵野線 新座駅下車、徒歩8分
東京からは東武東上線池袋から朝霞台(急行18分)→JR武蔵野線北朝霞経由新座駅(3分)
JR埼京線武蔵浦和乗換え、JR武蔵野線新座駅(12分)
JR中央線西国分寺から新座駅
ホテル:池袋から大学まで電車の乗車時間は30分、徒歩をいれると40分です。池袋、新宿に宿泊されてもよいのですが、近いのはJR北朝霞駅(東武東上線:朝霞台)あたりに宿泊されると便利です。
北朝霞駅(新座駅から3分)そばのホテル:
シティ・イン北朝霞
TEL:048−487−1711
FAX:048−487−1713
シングルベッドルーム ¥6,000 円
ダブル、ツインもあり
詳しいプログラムは次号ニュースレターでお届けします。

男女共同参画をめぐる論点研究会報告

お茶の水女子大学生活科学部で11月2日に第1回目、12月16日に第2回目を行った。第1回目に、反動派の男女共同参画攻撃の文言はいずれも同じ内容であり、これらへの対応マニュアルを至急につくる必要があることが確認され、第2回目はその案について検討した。第3回目は2月初旬を予定している。(詳細な記録は日本女性学会研究会ホームページ参照)

第1回報告

参加者は学会幹事を含め12人。報告は2002年6月に反「男女共同参画推進条例」を制定した宇部市から小柴さんと自民党の反対で継続審議となった千葉県から出納さんの2人。以下は報告と議論の概要。

1.宇部市の状況

宇部市は議員32名中女性6名、4名の女性県議会議員のうち2名は宇部市選出で、リベラルな地方都市である。’98年には男女共同参画宣言都市となり、’01年に男女共同参画宣言都市サミットを開催した。
’00年3月と6月の議会での条例制定についての質問に、市は「前向きに」と回答した。同年10月に男女共同参画審議会に諮問し、11月〜12月に市民意見をインターネットで公募した。公聴会は開催されなかった。2002年1月に男女共同参画審議会が答申したが、予定された3月議会では上程されなかった。同年4月に男女平等行政を推進してきた男女共同参画課課長(女性)が定年退職。同年4月末に市の人材養成講座修了生で作成した市の男女平等推進パンフレットに一議員がクレームをつけ、市は謝罪して、回収した。同年5月に「良識ある男女共同参画条例を求める宇部市民の会」が要望書を提出した。同時期に宇部女性会議、宇部連合婦人会など3団体は、審議会案の条例早期制定を求める署名簿4000人分を提出した。その時すでに、助役と委員長で、改悪条例案が作られていたことを知らなかった。6月1日に宇部女性会議は、大沢氏を講師に、男女共同参画推進条例に関する講座を開催、150人が参加した。同日、男女共同参画を考える宇部女性の会が、岡本明子氏とエドワーズ・博美氏を講師に講演会を開催、400人が参加。同月26日に、執行部案が可決された(27対5)。反対票は共産党だけ。共産党以外の女性議員3名は改悪案に投票した。
宇部市条例で問題のある箇所は以下のとおりである。
基本理念1「男女が、男らしさ女らしさを一方的に否定することなく男女の特性を認め合い…」
基本理念4「家族を構成する男女が、家庭尊重の精神に基づいた...」
基本理念5「専業主婦を否定することなく、現実に家庭を支えている主婦を男女が互いに協力し...」

2.千葉県の状況

千葉県では、ユ01年3月、懇話会に「条例専門部会」(渥美雅子座長、大沢真理、鹿嶋敬、金城清子ほか3名)を設置し、11回開催(うち3回公開)し、県下4ケ所の公聴会を開催し、ユ02年9月議会に提案予定で400件以上の県民意見を集めた。ところが、議会開会前に千葉自民党県連が以下の4項目を修正要求。

  1. 「入札参加資格審査に男女共同参画の取組の報告を考慮」の全文削除
  2. 「家族経営協定」の文言の削除
  3. 「教育活動」の項「性別にかかわりなく、(その個性および能力を十分に発揮する)」を削除。
  4. 「生涯にわたる女性の健康支援」の項「(男女が、互いの人格を尊重し、性及び子を生み育てることについて、)自らの意思で決定することができるよう(性教育の充実及び促進)」を削除。

堂本知事は1、2については了解。
しかし、自民党の若手議員が3.4についても強硬に主張したため、堂本知事は、これは「条例の根幹にかかわる」と拒否。さらに、県議会開会中、自民党の質問では多くの質問と主張がされた。以下はその一部。

  • 行政が個人の思想や良心の自由に踏み込むおそれがある。
  • 「男らしさ、女らしさ」を一方的に否定している。社会の制度や慣行に対する配慮がなされていない。条文ごとにあげればきりがないほど党内にさまざまな意見がある。
  • 「胎児の生命権」は認められるべきもの。「自らの意思で決定できる」は削除すべき。中絶は世界的に合意されていない。
  • アメリカでは連邦政府が1996年に結婚までは禁欲のみの性教育プログラムに大規模な助成を始めてから、10代の妊娠、性感染が減少。禁欲教育が肝要。
  • 「性別にかかわりなく」は、「男女の平等」というより、「男女間の性差の区別」を否定する考えから表現されたもので、「ジェンダーフリー」の過激な思想に基づくもの。

条例案は「継続審議」となっており、自民党は20項目以上手を加えた独自の「自民党案」を弁護士もまじえ、作成しているということである。

その他、神戸市、前橋市、さいたま市の状況が報告され、以下のことに合意した。

  • 審議会(懇話会)案に対する審議会(懇話会)の対応の弱さ、
  • 行政担当者の認識の弱さと市民団体との連携欠如、
  • 女性議員の連帯の欠如、・対応マニュアルの必要性
(橋本ヒロ子)

 

第2回報告

話題提供者3名の反動派に対する反論をたたき台にワークショップ形式で展開した。参加者23名のなかには初めて出席という人も多くいた 。地方自治体職員、教員、活動家、弁護士、研究者など多様な立場の参加者が自由討議した。
まず國信は、専業主婦という生き方をどのように考えるかについて反論の論点をレジメにそって報告。その論点は

  1. 無償労働男女共同分担の必要性:家事、育児、介護という仕事は重要な役割であり、その役割を担う人は男女ともに必要。
  2. 経済的責任分散:男性のみが家計を支えるという生活では景気低迷の折支えきれない、また男性にとっても過重となる。
  3. 次世代育成は生きがい:家事、子育ては男性にも楽しいものであり、 生きがいとなる。あらたな生活の側面を発見・学習できる役割である。子供との親密な関係を形成できる。
  4. 年収103万円以下の働き方がトクという言説のウソの説明:パート主婦という生き方については103万円の壁が女性を低賃金労働にとどめている。また税金免除、年金積み立て免除をされている人(専業主婦・年収103万円以下のパート主婦たち)が1200万人もいることは今後の日本の福祉政策にとって資源不足の原因となる。女性の労働機会の拡大、平等な社会保障の充実が必須。

次に細谷が「〜らしさ」と伝統の問題について報告。現在ある二分化された男女の「〜らしさ」に100%当てはまるような人は稀だ。子どもを男/女らしさのどちらかの鋳型にはめ込むことは無理がある。またジェンダー・フリー教育は男女の別を否定すると保守派は批判しているが、スポーツや活動を男向け・女向けと固定的に決めるのではなく、双方が選べるようにすべきであるとしているだけである。子どもが苦手なことを伸ばすのも教育だが、本人の状態の見極めを押し付けをすると、子どもが自信を喪失したり、学校嫌いになってしまうこともある。やさしさ、勇気など現在において望ましい性質は、男女の別なく教育してゆくことを目指すべきである。
フェミニズムは伝統的文化、慣例を破壊しようとしているという保守派の批判に対しては、伝統自体が多様な変化をへているものであり、時代に適した変容をしつつ受け継がれてきているものである。伝統をまったく変えてはならないというのは、逆に伝統を全否定することと同様に不適切だと反論した。
最後に橋本は性と生殖の自己決定権について報告した。それは女性が不利になるようなフリーセックスを推進することではなく、そのような議論は誰もしていない。自己決定とは女性が望まない性行為、妊娠、出産を強制されないことである。本人とパートナーとの合意のもとに生殖、性行為があることが重要なのである。援助交際など18歳以下の少女による性的サービスはたとえ少女が自己決定し望んだとしても男性によって買われた性には少女側に自己決定はない。したがって性の自己決定を認めると少女が援助交際にはしるという論理はまったくの曲解、誤解である。中学生に性教育を実施することは性行為を10代の子供たちにしろと勧めることではなく、性のあり方、意味を正確な情報にそって教えることである。「ラブ・アンド・ボディ」という性教育の冊子も、性について誤った情報が蔓延するなか、正確な情報、子どもの権利を擁護できる情報をつたえることが主旨となっている。
このあと熱心な自由討議が行われた。

(國信潤子)

◆研究会費用申請の仕方について◆

学会では、会員の催す研究会の補助を行っています。補助についての趣旨の確認を図り、活発な利用をお願いするため、申請の仕方を以下に再掲します。

◇会員企画研究会の企画募集

大会が年一回に減ったことを受け、研究会を活性化していくことになりました。
幹事会企画研究会を年に数回おこなう他、会員個人やグループ(自主的研究・運動グループ)のイニシアチブによる研究会についても、学会として経費補助や情報宣伝などを行って行くことになりました。そこで、会員の皆様からの意欲的な研究会の企
画をお待ちしています。
以下の諸点が要件です。

  • 研究会の趣旨が女性学会の趣旨に適っているもの。
  • 少なくとも会員に対して、公開の研究会であること。
  • 助成金は講師への謝礼・交通費、会場費などにあてるものとする。
  • 研究会のタイトル、趣旨、企画者(会員個人・会員を 含むグループ)、開催場所、開催日時、研究会のプログラム、全体の経費予算と補助希望額(2万円以内です)が決定していること。なお、未決定部分は少ないほど良いのですが、場所・プログラム・経費については予定=未決定の部分を含んでいても結構です。
  • 学会のニュースレター・ホームページに載せる「研究会のお知らせ」の原稿(25字×20行前後)があること。原稿には研究会の問い合わせ先を明記のこと。
  • 研究会終了後に、研究会実施の報告文を学会のニュースレターとホームページに書いていただきます(研究会補助費は、その原稿提出後に出金いたします。)
  • 学会総会での会計報告に必要なため、支出金リストと、総額での企画者による領収書

申し込みは、広報期間確保のために、原則として開催の3カ月前までに、研究会担当幹事まで、お願いいたします。
詳細のお問い合わせも、研究会担当幹事まで。
今期の研究会担当幹事は、橋本ヒロ子、國信潤子、細谷 実です。

■会員の活動

男女共同参画研修事業の報告

伊田久美子

昨年12月7日・8日に大阪女子大学女性学研究センターと大阪府男女協働社会づくり財団共催による男女共同参画政策推進のための研修事業が行なわれました。この共催事業は今年度で3回目になります。
今年度は「男女共同参画政策の現状と今後—より一層の発展をめざして—」と題して、7日はドーンセンターを会場として大沢真理さんの講演、および住田裕子さん、藤枝澪子さんをお迎えしてのシンポジウムを、大阪女子大学女性学研究センター主任研究員の足立眞理子さんの司会で開催しました。大沢さんは基本法のあらましやその後の動向とともに、男女共同参画ビジョンのめざす「性別による偏りのない社会システムの構築」という目標が現在の日本の経済・社会の新たな展開にとっても必要かつ有効な手段であることを、明快にお話しくださり、その後国や自治体で審議に関わってこられた経験をふまえた住田さん、藤枝さんのご発言やフロアーからの自治体職員や市民の立場からのご発言など、マクロな政策レベルとミクロな実践上の問題意識が交流する討論が行なわれました。また翌8日は大阪女子大学を会場として東京自治研究センターの菅原敏夫さんによる「市民による行政評価システム」についての講演と自治体や市民グループによるワークショップを行いました。
バックラッシュの動きが活発化している現在、あらためて男女共同参画政策の意義と課題を確認する貴重な機会であったと思います。

学術会議シンポジウム「学術の世界におけるセクシュアル・ハラスメント−加害と被害」

戒能 民江

昨年12月24日午後、学術会議講堂において、表記シンポジウムが開催された。学術会議が大学等におけるセクシュアル・ハラスメントをテーマにシンポジウムを主催するのは、はじめてのことである。主催は、学術会議「ジェンダー問題の多角的検討」特別委員会。  学術会議には女性会員が圧倒的に少ない。男性優位の日本の学術研究体制を象徴する学術会議において、大学等のセクハラ問題がとりあげられ、しかも、文部科学省の対応責任者をパネリストに迎えたこと、被害と加害の構造的認識にたった政策提言検討の必要性を呼びかけたことは意義深い。
自然科学系の大学教員である加藤万里子さんは、自身の被害経験や多くの女性研究者の実例をあげながら、「学問の世界に特有な状況のもとで」セクハラが起きやすいこと、セクハラ被害が学術研究に大きな影響を与えていることを、女性研究者の昇格問題など、具体的に報告した。さらに、大学への告発によって深刻な二次被害を受け、被害が拡大する情況についても指摘し、加害者に対する厳しい処罰と再教育の必要性を強調した。
大学の法的責任について問題提起をしたのは、民法学専攻の大学教員松本克美さん。近年、大学の教育研究環境配慮義務を一般論として肯定する裁判例や、直接には加害者個人の不法行為責任を追求する場合でも、加害者個人の責任認容の前提として、大学の教育研究配慮義務を認める裁判例が出てきていることを指摘し、大学が構成員の権利義務を具体的に保障する場として、「法化」社会となるべきことを主張した(詳しくは、ジュリスト2003年1月号参照)。
戒能からは、キャンパス・セクシュアル・ハラスメント全国ネットワークが昨年7月に発表した「提言−被害を受けた人の権利保持と権利回復のために」(同ネットHPに掲載)および共同研究「大学の取組みの現状と課題」調査結果中間報告を説明して、大学の取組みの問題点と課題について報告した。
文部科学省担当者は、セクシュアル・ハラスメントを理由とした国立大学教員の処分の増加傾向(H13年12名、H14年12月現在14名)を指摘し、大学等でセクハラは絶対起こってはならないという国の基本姿勢を強調した。だが、防止について責任を持つのは各大学であり、各大学の努力を求めるという姿勢に終始した。
会場からは専ら文科省への質問、要望が中心であり、文科省としての予算や人員の確保、大学への指導の強化など、国のやる気を求める意見が多く出された。また、文科省の指導を受けながら、隠蔽策とも思える不適切な対応で人権侵害を続けている国立大学のケースに対する告発の声があげられ、依然として変わらない大学の姿が浮き彫りにされた。
国の対応の問題点として、文科省の担当部局が教職員の処分を扱う人事担当であり、高等教育政策のなかにセクハラが位置付けられていないことと、私立大学の学生に対するセクハラが制度の狭間にあることがあげられる。国立大学法人化以降は、国立大学も、現在の私立大学と同様、均等法21条の対象となる。私立大学の事例は、現在でも厚労省の雇用均等室による相談及び行政指導の対象となるが、大学におけるセクハラの構造的特質や大学特有の事情、大学の対応による二次被害や加害者からの二次加害により増幅している学習・研究環境の侵害の実態を押さえた上での支援や行政指導は期待できない。やはり、文科省が施策の責任を取るべきであり、高等教育・学術研究体制の問題として、早急に具体的な取組みを強めるべきである。
大学におけるセクシュアル・ハラスメント防止への取組みのきっかけは、数多くの裁判でのたたかいを背景に、1995年日本女性学会がワークショップを開催し、文部省へ要請したことから始まった。1996年には学術会議の会員を中心に設立された「女性科学研究者の環境改善に関する懇談会」JAICOWSが共催したキャンパス・セクハラシンポジウムを契機に、ネットワークの必要性が認識されるようになった。日本学術会議が今後も継続的にセクシュアル・ハラスメントについて、さまざまな議論の場をつくり、積極的に国に対して提言を行っていくことを期待したい。なお、日本女性学会としても、全国ネット「提言」を受けて、セクハラ防止ガイドラインを制定する予定である。

出 版

安達みち代  『近代フェミニズムの誕生』世界思想社
服藤早苗編著 『歴史のなかの皇女たち』小学館
三宅義子   『女性学の再創造』ドメス出版
(訳 書)
キャンダス・デュ・ピュイ、デイナ・ドヴィチ著
片山亜紀訳  『癒しのカウンセリング−中絶からの心の回復』 (平凡社)

展覧会・音楽会

「FL♂RA」(フローラ)展  内籐千文

花のようにたおやかな美しい裸夫を描いた絵画展です。
期間 2003年2月25日〜3月2日
11:00〜19:00 最終日17:00
場所 ギャラリー16
京都市左京区岡崎円勝寺町1−10 スクエア円勝寺2F
tel 075-751-9238

「日本の女性作曲家とタイユフェール
〜女性作曲家を聴く・その5」

昨年、女性作品も含めた質の高い音楽週間を開いたフランスで、日本女性の作品が紹介される。20世紀に生きた5人、金井喜久子、渡鏡子、松島彜、外山道子、吉田隆子の作品が一挙に紹介され、同時にフランス6人組の女性作曲家タイユフェールの作品も取り上げられる。
2003年3月28日(金) パリ日本文化会館
18:00 会議室 プレ・レクチャー:辻浩美 入場無料
20:30 ホール
出演者:奈良ゆみ(ソプラノ) 小林美恵(ヴァイオリン) 花岡千春(ピアノ)
入場料:12ユーロ 仏語チラシ請求可
主催:女性と音楽研究フォーラム(小林緑)

日本女性学会誌『女性学』第10号……2月初旬刊行!!

特集<ポルノグラフィの言説をめぐって>

論文
風間孝「介入の場としてのゲイ・ポルノグラフィ」
沼崎一郎「ポルノグラフィの象徴人類学」
森岡正博「男性のセクシュアリティとポルノグラフィ」
北原みのり「レポート・オーストラリアのポルノ規制と日本の現状比較」
他、論文、研究ノート、書評 を掲載
2500円。

会員には一冊ずつ送付されます。それ以外で入用の方は大手書店、または新水社へお申し込み下さい。

次号ニュースレターは5月上旬発行

掲載希望の原稿締切は3月末日
次号編集担当伊田