NewsLetter 第94号 2003年5月発行

日本女性学会NewsLetter

(*会員に送付しているペーパー版の「学会ニュース」とは内容が一部異なります)

女性学会ニュース第94号[PDF] 2003年5月発行


 

学会ニュース
日本女性学会  第94号 2003年5月

2003年 日本女性学会大会

日 時 2003年6月7日(土)・8日(日)
会 場 十文字学園女子大学
〒352‐8510 埼玉県新座市菅沢2‐1‐28
tel: 048-477-0555 fax: 048-478-9367
共 催 十文字学園女子大学 女性と情報研究センター
参加費 非会員:1000円
会員および十文字学園女子大学学生:無料
プ ロ グ ラ ム
第1日 第2日
12:30 受付開始 9:30 受付開始
13:30〜16:00 シンポジウム 10:00〜12:30 個人研究発表
16:30〜17:30 総会
(総会の間、懇親会出席の非会員向けに別室でヴィデオ上映)
13:30〜15:30 ワークショップ
18:00〜20:00 懇親会

2003年大会シンポジウム

「男女共同参画社会」をめぐる論点と展望

コーディネーター 舘 かおる(お茶の水女子大学教員)

1999年の男女共同参画社会基本法制定後、2000年6月、日本女性学会は、シンポジウムのテーマに「フェミニズムと政治権力」を掲げた。コーディネーターの大沢真理氏は、趣旨説明文に「フェミニズムの一定の制度化にたいして保守派はいらだちを隠さない。改憲派やいわゆる自由主義史観派は、フェミニストを家族の破壊者と見立てて悪罵の声を高めている」と記した。そして3年後の現在、男女共同参画及びフェミニズムへのバッシングの言動はますます激化し、地方議会で男女共同参画の主旨に反した条例の制定がなされている。こうした動向に対し、日本女性学会は、2002年11月「男女共同参画をめぐる論点研究会」を立ち上げ、状況把握と論点整理に努めた。そして、男女共同参画への典型的な批判例をとりあげ、『Q&A—男女共同参画をめぐる現在の論点』(『学会ニューズレター号外(2003年3月)』)を刊行した。
こうした活動の上に、今回のシンポジウムでは、母体保護法、民法改正、国旗・国歌法制定時から顕在化し、新しい歴史教科書を作る会の慰安婦記述等の削除、女性戦犯国際法廷報道改ざん問題、有事関連三法の法制化、教育基本法改定、憲法改定へと進んできた動向が、どのような関係の下に存在しているかを構造分析し、男女共同参画及びフェミニズムへのバッシングや揺り戻しへどう対応するかについて議論を行うことが不可避であると判断し、開催を意図した。さらに、この今日的状況にフェミニズム、女性学がどのように対峙し、今後の女性学を構築していくかを議論することも射程にいれている。
シンポジストの報告概要は以下のとおりである。このほかに状況把握に役立つ関連文献リストの配布と参加者からのコメントも予定している。

(文責 舘)

シンポジストと発題テーマ

◇条例制定をめぐるバックラッシュ再考

船橋邦子 (和光大学教員)

大阪府の条例策定検討委員として、千葉県平等条例ネットのメンバーとして条例策定に運動にかかわってきた立場から以下のような視点からバックラッシュの動きを検討する。
千葉県議会において、周知のように条例検討専門部会、自治体、県民の協力により作成された条例案は、廃案となった。この間の反対派との抗争のなかで、彼らの主張は、フェミニズム、男女共同参画にたいする必ずしも無理解、曲解から生じているのではないことが明確となった。いや、むしろ、彼らの家族経営協定、性的自己決定権、性教育の推進の否認は、家族の絆論やプロ・ライフ派など保守派と結びついたネオ・コンサーバティブの世界的な潮流と同様の国家主義的な右傾化の流れに位置付けられる。従って、バックラッシュは極めて政治的問題であり、有事法制や住基ネット、教育基本法改悪などの動きと男性支配の強化との関係をフェミニズムの視点でいかに分析するのかが今回の課題ではないかと考えている。その意味で条例制定に向けてわれわれが主張してきた内容の再検討も求められるだろう。

◇教育改革と男女共同参画バックラッシュ

亀田温子 (十文字学園女子大学教員)

男女共同参画に対するバックラッシュが進む中で、「学校」はどのような装置として機能させられていくのだろうか。これまでの学校のかかえる問題、こどものかかえる問題を解決しないまま、教育改革により学校は階層やジエンダーを再生産する機能がより強められ、一方では心理主義化により社会とのかかわりやつながりをもつ力を希薄にしていく動きがある。さらに学校改革による教師をささえる集団がどのように抑圧構造へと変化しているのか、バックラッシュによる動きを教育・学校を通して探る。

◇バックラッシュの構図

伊藤公雄(大阪大学教員)

時代の転換点ともいえる大きな変化のなかで、近年、保守派の急速な台頭が国際的にも目立って広がりつつある(イラク戦争の「原動力」であったアメリカ合州国のネオ・コンサーヴァティヴは、その最も典型的な例だろう)。

日本社会においても、「新しい歴史教科書を作る会」の運動にみられるように、イデオロギー的諸集団と一部メディア、さらに保守的政治勢力の連携による「反動的」といっていい動きが目立ちつつある。この動きは、人々の多様な価値観や生活スタイルの広がりを、ある「ひとつ」の固定的な観点に立脚して反動的に押し潰そうとする傾向をもっているという特徴がある。しかも、そこには、「対話」による問題解決ではなく、性急な「力」の論理がつねにともなっている。さらに、コケンやメンツといった、自らの空虚さを強がりやこけおどしで抑圧しようという<男らしさ>の論理が、しばしば見え隠れしているのも事実である。

その意味で、こうした保守派の動きが、ジェンダー平等への運動に対するバックラッシュと結びつくのは必然だっただろうと思う。ジェンダー・バイアスをともなう固定的で抑圧的な社会構造を、一人ひとりの多様性の承認に向かって開いていこうというジェンダー平等への動きは、あらゆるものを固定的な論理(そこには明らかに男性主導というイデオロギーが含まれている)のもとへと統合しコントロールしようとする保守派の人々にとって、何よりも我慢がならないものだからである。

本報告では、社会の大きな変化の流れを見据えつつ、こうしたジェンダー平等へのバックラッシュの動きを中心に、そこで語られている言説の特徴や運動の構図を読み解いてみたいと思う。

個人研究発表

第1分科会 司会:内藤和美

(1) 信楽町の共同参画への取り組み

寿崎かすみ

現在、滋賀県の信楽町では2003年度末に男女共同参画条例を策定するための準備を進めている。信楽町は、やきものと農業、そしてゴルフ場が主な収入源であり、昔からの町内会組織、婦人会組織が残っている。また同和問題が政策課題として掲げられる土地柄でもある。このような町で、町民の意識を草の根から変えるために、実効性のある条例を作る作業がすすめられている。筆者はこの条例づくりに、地元の有志とともに委員として関わっている。この、信楽町のとりくみについて報告する。

(2)「教育とジェンダー」に関する意識調査:同志社女子大学卒業生対象の調査研究より

三宅えり子

当研究は同志社女子大学研究プロジェクト「教育とジェンダー」の一環として行った意識調査にもとづいている。卒業生182名の対象者から、ジェンダー意識、就業状況、大学生活、建学の精神、教育理念、個人データについて得た回答をSPSSで統計処理し、分析を行った。
60項目の質問をそれぞれ集計した上で内容により年代別、就業グループ・無就業グループ別で様々なクロス集計を行い、大学教育の成果と就業状況とジェンダー意識の重層的相関関係の分析を試みる。この調査研究は男女共同参画社会実現に寄与するための高等教育における女性教育のあり方を考察することを目的としている。

第2分科会 司会:新田啓子

(1)作られた自爆攻撃者の母親像? パレスチナ滞在から見えてきた虚構

清末 愛砂

イスラエルによるパレスチナ自治区への軍事占領は、その過酷さを増す一方、その占領の産物として、自爆攻撃による抵抗を試みるパレスチナ人の若者たちが、少数ながら生まれてきた。「テロリスト一掃作戦」を標榜するイスラエルにとって、自爆攻撃は、自らの軍事占領を正当化するための格好の材料となり、「パレスチナ人=テロリスト」像がますます浸透しつつある。その過程の中で、パレスチナの母親たちは、「自らの子どもを自爆攻撃に送り込む血も涙もない母親」あるいは、「自爆攻撃を率先して推進する母親」として描かれるようになってきた。

私は、2002年7月中旬から11月中旬にかけて、ヨルダン川西岸地区ナブロス近郊のバラタ難民キャンプに滞在した。同キャンプでの滞在を通し、自爆攻撃者の息子を持つ3人の母親たちと交流を重ねてきた。本研究発表では、彼女たちとの会話・交流を通して見えてきた「自爆攻撃者の母親」像の虚構を分析し、そのカウンターイメージを打ち出していきたいと思う。

(2)バングラデシュにおける「女性への暴力」を考える
—新聞報道と現地芸術家によるアートの考察

水野 桂子

バングラデシュでは、統計や新聞報道等メディアに現れる数以上に、実際には「女性への暴力」は非常に多いとこちらでの開発と女性(WID)に関する仕事を通じて推測できる。今回の報告では地元英字紙・ベンガル語紙における「女性への暴力」の報道の切り抜きと、及び芸術家による直接的な表現から、暴力の背景や実態について紹介・分析し、各国で共通する女性への抑圧の問題を考察する。

第3分科会 司会:田中和子

(1)ICTとジェンダー

國信 潤子

ICTの活用が女性をエンパワーするにはどのような対応、施策が必要かを探求することが今回の調査の主旨である。
アンケート調査からみえた活用状況:地方自治体による女性関連施設、民間組織でジェンダー平等化を促進を主旨とする組織、大学関連図書館そして女性学等研究所などに絞ってアンケート調査の結果を紹介する。国信は調査の全体構造と、女性学関連研究所、施設の活用状況について報告する。民間組織等における活用状況については松浦が報告担当する。
また国際比較としてタイ、スェーデンにおいて事例調査を実施、その結果と、先行資料調査等により、国際的に ICT 活用のジェンダー格差について今後の対応と課題を考える。

(2)活用事例調査から見たNPO/NGOにおける女性のICT活用事例とその傾向

松浦さと子

1980年代のコンピュータは男性優位の職場環境において、女性が「支配」され、「省力化」される道具であったが、1990年代以降におけるコンピュータ利用は、インターネットとの接続によりコミュニケーション利用の範囲が拡大し、女性にとって「連帯」、「創造」の手段として非営利目的に活用される事例が急増している。
そして、能動的に組織やネットワークを構築することのできた女性たちが経験や知識を分け合い、社会に働きかけ政策提言を行い、現状を変革することに成功しているケースが少なくない。
女性がICTを使いこなすことで、情報社会において可能性を拡大する一方、限界や障害がどのように現れているのかをも並行して報告する。

第4分科会 司会:舘かおる

(1)セクシャルマイノリティが照射する人権教育の課題
−大学教育実践「同性愛者と語る会」の視点−

吉田 和子

岐阜大学教育学部の教育実践学・教育実践学特論の公開授業「同性愛者と語る会」、その大学教育実践の視点と同時に、セクシュアルマイノリティが照射する人権教育の課題を検討するとともに大学教育実践の課題をも提起したい。

セクシュアルマイノリティが照射する人権教育の課題

  1. 不可視化から可視化へ−microと macroの politicsの顕在化
  2. 異性愛強制の再生産と家族・学校の共犯的重層差別
  3. 差別の複合性と弱者のままで存在することの意味を問う人権教育
  4. 分断のない性と生をいきる人権教育へ

(2)下田歌子の社会構想と「手芸」

山崎 明子

下田歌子は、近代日本の代表的な女子教育のイデオローグである。下田は、宮中出仕、イギリス留学、婦人会組織さらに実践女学校の設立等の経歴を経て、儒教思想及び社会階級制度、さらにジェンダー・システムを巧妙に利用して、近代国家における女性役割を確定することを目指していた。この近代的な女性統御には、皇后を頂点とし、「主婦」を中核とし、さらには女工や下婢等の下層の女性たちを底辺とするピラミッド型のヒエラルキーが想定されており、上から下へと「感化」する回路が下田自身によって構想されていた。
本発表では、この「感化」のシステムについて論及するとともに、その具体的な方策であった「手芸」を取り上げる。「手芸」は下田の主張する「実学」として重視されており、その目的は女性を精神的・身体的に統御していくことにあったと考えられる。
以上の点を、下田が著した二冊の手芸テキストの分析を通じて明らかにする。

第5分科会 司会:船橋邦子

(1)ポルノグラフィー(アダルトビデオ)とフェミニズムの距離感

矢島 千里

アダルトビデオの一部表現が女性に対する暴力と権利の侵害であると、いくつかの女性団体が何回となく抗議行動を起こしている、にもかかわらず訴えられた監督や会社は、それを逆手にとってメディアをバックに、更に周到に制作や販売を行い、最近では、勢いに乗ってメジャーに売り込み、関連本は一般書店の店頭に平積みされるようにまでなっている。そしてそのなかで「ヒステリックにポルノを批判し自由な表現を規制しようとする人達=フェミニスト」と繰り返し発言している。しかし、振り返って女性達はこの業界のどこまでを知り、どうしたいというのか。この半年間で50本のアダルトビデオを視聴し、製作者との面談のなかで考察したものを発表してみたい。

(2)メディアの中の「ロリータ」—日本における「ロリータ」構築をめぐって

須川亜紀子

「ロリータ」は1960年代にロシア人亡命作家ウラジーミル・ナボコフの小説『ロリータ』から名づけられ、日本では「ロリータ」とは、「青年・中年男性の性的対象物としての10代の少女」の意味合いが持たされ、また「ロリータ・コンプレックス」(略して「ロリコン」)は、青年・中年男性が成熟した女性に性的興味を持たず/持てず、10代(特にローティーンを指す場合も多い)の「少女」に性的興味を抱く「症状」として意味されることが多い。
この発表では、小説のプロットから外れて、他国には見られない「ロリコン」という日本での使われ方をめぐって、80年代のビデオの普及と幼児殺人事件をきっかけにした「ロリータ」をめぐるメディアの言説の分析と、存在しないものを表象し、反復することで根拠をもってしまうメカニズムを、いわゆる「(恋愛)育成シュミレーションゲーム」や幼児・ローティーン向け TV アニメにおける少女表象を例にとって解明する。そこには、ターゲットとされる男性ユーザーの少女育成への欲望、幼児・ローティーン少女視聴者の構築された欲望とその反復があると思われる。

(3)日本新聞におけるピルの報道にみるジェンダー観の分析—80年代半ば以降中心に

アナリア・ヴィタレ

本報告の目的は経口避妊薬(ピル)に関する80年代半ば以降の新聞記事を手がかりにして、日本のジェンダー観について検討することである。新聞には55年からピルに関する記事が登場するが、とりわけ80年代半ば以降のそれは、ピルを医学的な問題としてではなく、さまざまな観点から取り上げることになる。こうしたピルについての記事の分析からは、(1)ピル=女性権利(2)ピル=性の乱れ(3)ピル=男女不平等関係(4)ピル=ホルモンに対する恐怖というディスコースが存在しているということが明らかになった。分析の対象とした記事は85年から99年(ピルの認可された年)までの読売新聞、毎日新聞、朝日新聞、日本経済新聞に掲載されたピルに関する150件あまりの記事である。

第6分科会 司会:戒能民江

(1)性犯罪裁判を読む—ある強姦事件の事例から—

牧野(博田)雅子

従来よりフェミニズムは、主に、条文や判決文、被害女性の扱われ方を対象として、性犯罪裁判の分析を行い、刑事司法の男性中心主義性を批判してきた。その批判を実際的な改善につなげるためには、公判廷における言説や事件記録も分析の対象とし、より厳密に刑事司法の問題点を指摘することが必要であると思われる。
発表者は、2001年12月より、ある強姦事件の加害者及び関係者に対する聞き取りを行い、当該裁判に関しても、公判傍聴や事件記録の分析等の詳細な調査をする機会を得た。本発表では、裁判における調査を通して見えた、刑事司法が前提とする「性犯罪本能説」や犯罪の独占、男性による女性所有の思想、女性に対する一方的な価値観の強要や性のダブルスタンダードといった、被害女性を貶めるばかりか、性犯罪を生み出す社会文脈を強化する恐れのある問題を指摘し、男性中心主義を批判すると共に、システムの改善へと繋がる方法を模索したい。

(2)法律学における婚外子の問題化過程—商業誌の記事分析から

橋本マコト

近年、日本の家族問題論において「夫婦別姓」などと共に活発化している議論のひとつに、「婚外子差別」の問題がある。「婚外子差別」に関する一連の議論(以下、婚外子問題言説と呼ぶ)は、両親が法律婚をしていないために「非嫡出子」という法的地位を与えられた人々に発生する法制度上の処遇を「差別」であるとして問題化してきた。
一見してわかるように、婚外子問題言説の問題枠組みは、法律学的な知によって強く規定されており、法律学分野においても非嫡出子「差別」をめぐる活発な議論が行なわれている。問題になっている法制度上の処遇は、現行民法の下で一貫して行なわれてきたものである。
だがしかし、法律学分野において、ごく最近まで社会問題は存在してはいなかった。従来の議論の枠組みは、あくまでも認知手続きなど実務上の問題あるいは当事者間のコンフリクト調整の問題であり、「差別」という社会問題ではなかったのである。にもかかわらず、このような非嫡出子の問題化について、そのプロセスを社会学的に検討する作業は、これまで行なわれてこなかった。そこで本報告は、法律学分野における非嫡出子をめぐる議論を検討し、法律学における婚外子の問題化過程を明らかにするとともに、「差別」問題化を支えているロジックを析出することを目的とする。

ワークショップ

(1)日々の活動から、女性学とのつながりを求め
〜『差異の政治学』をテキストとした「読み書き論文講座」の報告〜

渋谷典子(特定非営利活動法人ウイン女性企画)

男女共同参画社会の形成を第一の目的としている特定非営利活動法人ウイン女性企画(以下、ウイン女性企画)の日々の活動と、女性学とのつながりを考えることを目的とする。
その方法として、ウイン女性企画が2002年11月から実施している主催講座「読み書き論文講座」を取り上げる。この講座は、『差異の政治学』(上野千鶴子・著、岩波書店)をテキストとし、月に1回実施し、全6回(現在は、3回が終了)の参加型講座である。参加者はテキストの論文を読み深めつつ、日々行っている自分自身の活動を軸とした論文を書き進めていく作業を行っている。
ワークショップでは、講座の報告とともに、「学びから実践へ」「実践から学びへ」女性学をとおして、そのつながりと発展について考えていきたい。また、「誰が語るのか」についても考えていきたい。

(2)ポルノグラフィ被害を考える
〜DV、セクシュアル・ハラスメントと「ポルノ被害」〜

春原千咲、ポルノ・買春問題研究会*

ポルノグラフィをめぐる問題は、ポルノ制作過程における人権侵害のみならず、殺人、レイプ、ドメスティック・バイオレンス、セクシュアル・ハラスメント、子ども性虐待など様々な問題と深く関わっている。しかし現状では、ポルノに関わる被害は認識されにくく、このことがさまざまな性犯罪、被害に対する取り組みの一つの障壁となっていると思われる。
当会が昨年実施した「ポルノに関連した被害についてのアンケート」調査報告、相談機関など専門職の方々とパネルディスカッションをおこなう中で、参加者と共に「ポルノ被害」「加害」についての認識を深め合い、「女性に対する暴力」に対するより包括的な取り組みの方途を探る場としたい。

*「ポルノ・買春問題研究会」APP研—Anti Pornography & Prostitution research group)とは:
 現在、”ポルノや売買春は当事者の「合意」のもとに行われるのでとくに問題はない”という議論(性的リベラリズム)が大手を振ってまかり通っています。ポルノ・買春問題研究会(APP研)は、こうした議論を批判しつつ、女性の人権・性的自由・性的平等を擁護するフェミニズムの見地から、ポルノ・買春問題をはじめ、セクシュアリティをめぐるさまざまな問題を研究することを目的として、複数の研究者および運動家によって1999年12月に結成されました。

(3)当事者の視点で問う「DV防止法」

原田恵理子

2001年4月に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(DV防止法)」が成立し、ドメステイック・バイオレンスに関する社会の認識は、一定変化してきたが、被害者への援助施策は十分とは言い難く、二次被害も後を絶たない。今年はDV防止法3年後の見直しの時期にあたる。参議院共生社会調査会は、2003年2月末から見直し作業に着手し、各都道府県やNGO等の意見を求め、今年秋にも見直し法案は国会上程される模様である。このワークショップでは、DVの被害を受けた当事者から問題提起をうけ、DV防止法の課題、有効な援助施策などを考える。

(4)「シングルマザー」を考える

赤石千衣子、小林亜子、杉山直子、堀田香織、山本昭代

今日「シングルマザー」は、経済や人口移動のグローバル化が進む中で、世界的にその数を増やしている。しかし性別分業や男女の賃金格差は依然として根強い一方、社会政策のさらなる後退のなかで「自立」を強いられているのも、日本、米国をはじめとする多くの地域でみられる傾向である。
「シングルマザー」は、今日の世界が抱えるジェンダー化したさまざまな問題を、もっとも鮮明な形で引き受けている存在であるといえる。だが「シングルマザー」はその周縁性のゆえにステレオタイ プ化され、問題視されるのみで、「主体」としての「シングルマザー」が語られることはほとんどなかった。
このワークショップでは、これまでの「家族」と「シングルマザー」を巡る研究の問題点とあらたな位置付け、今後の研究の方向の可能性を、学際的に検討する。特に、「研究される対象」としてだけではなく、「発言する当事者」としてのシングルマザーに注目することが目的のひとつとなる。

(5)男女共同参画推進条例づくり攻撃に対抗する

斎藤周、出納いずみ、船橋邦子、橋本ヒロ子等

男女共同参画推進条例づくりが全国的に広がり始めた2001年暮ごろから、反対派からの攻撃がひどくなった。特に促成ではなくじっくり時間をかけて優れた内容の条つくりをしている自治体における攻撃が強い。条例制定をした自治体は急増したが、条例づくりは危機的状況にあるといってよい。このような攻撃に対して、男女共同参画社会の実現を推進する立場にあるものは、どのように対抗していくか。日本女性学会が2002年から開催した3回の研究会成果も踏まえ、千葉市、千葉県、前橋市、埼玉県朝霞市、さいたま市など地域での実情報告などをもとに今後の対策を検討する。

■会員の活動

著書

佐藤千登勢 『軍需産業と女性労働—第二次世界大戦下の日米比較』 彩流社
2003
村尾祐美子 『労働市場とジェンダー』 東洋館出版社
2003
M. ジャコーバス/E. F. ケラー/S. シャトルワース編
田間泰子・美馬達哉・山本祥子監訳
『ボディー・ポリティクス−女と科学言説』 世界思想社
2003
河地 和子 『自信力はどう育つか』 朝日新聞社
2003

■大会案内

* 懇親会のご案内

会場:十文字学園女子大学カフェテリア
参加費:4000円
5月31日までに、以下へ「懇親会申し込み」の件名でお申し込みください。
お名前と連絡先を忘れずにお書きください。
e-mail: gender●jumonji-u.ac.jp (●を@に書き換えてください)
fax: 048-478-9367
十文字学園女子大学 日本女性学会大会事務局

* 大会期間中の有料保育のご案内

日本女性学会大会中有料で保育を行います。地域の子育てネットワークにお願いします。時給900円で最低2名からお願いできます。保育料は子どもの人数で割ります。それにおやつ代100円、傷害保険掛け金154円(子どもの人数が3人以下の場合は、500円を人数で割った金額です)が必要です。
希望者は5月15日までに、以下へお申し込み下さい。
申し込み先:e-mail: gender●jumonji-u.ac.jp (●を@に書き換えてください)
申し込みのさいに、次の5項目を明記してください。
(1)保護者氏名、(2)保護者連絡先、(3)お子さんの氏名(ふりがなもつけて)、(4)お子さんの年齢、(5)大会期間(6月7日13時〜17時30分、8日9時40分〜15時40分)の間の、保育を希望する時間帯

* 大会会場へのアクセス

十文字学園女子大学(http://www.jumonji-u.ac.jp/univ.htm)
〒352-8510 埼玉県新座市菅沢2-1-28
tel:048-477-0555 fax:048-478-9367
JR武蔵野線 新座駅下車、徒歩8分
東京方面からは、東武東上線で池袋から朝霞台(急行18分)、JR武蔵野線に乗り換え北朝霞経由で新座(3分)
・JR埼京線武蔵浦和乗り換え、JR武蔵野線新座(12分)
・JR中央線西国分寺から新座

* 宿泊のご案内

池袋から大学までの電車の乗車時間は30分、徒歩を入れると40分です。池袋、新宿に宿泊されても便利です。会場近くでは、JR北朝霞駅(東武東上線朝霞台駅)あたりが便利です。北朝霞駅そばのホテルを一ヶ所ご紹介しておきます。
シティ・イン北朝霞
tel:048-487-1711  fax:048-487-1713
シングル1泊:6000円ダブル、ツインもあり。