WOMEN’S STUDIES Vol. 14 (2006)

Journal of Women’s Studies Association of Japan

WOMEN’S STUDIES Vol. 14 (2006)

Edited by the Editorial Committee of the Women’s Studies Association of Japan

CONTENTS

Special Issue: Power and Trauma Connected With Gender
Violence and Trauma: What I Learned from Clinical Experience with Victims of Sexual and Domestic Violence MIYAJI Naoko
Against Structural Violence OGOSHI Aiko
“Violence” and Education from a Feminist Perspective KIMURA Ryoko
Articles:
Prostitution and Sexual Freedom SHIMOJI Masaki
The Origin of Second-Wave Feminism in the UK: Equal Pay Demands from the Ruskin Conference TOMINAGA Takahiro
The Mourning “Mothers”: Problems of the Feminist Subject and a Fetus MATSUURA Yumiko

Published by The Women’s Studies Association of Japan, Tokyo, Japan

投稿日: 2007年3月1日 カテゴリー: Journal

日本女性学会による、柳澤大臣発言に関する意見書

2007年2月2日
日本女性学会第14期幹事会および会員有志

 柳沢伯夫厚生労働大臣が2007年1月27日、松江市で開かれた集会で、女性を子どもを産む機械に例え、「一人頭で頑張ってもらうしかない」と発言をしていたことが明らかになりました。
これは、子育て支援を司る行政の長としてまことに不適切であり、即刻辞任されるよう強く求めます。

大臣の発言には、以下のような問題があると、私たちは考えます。

第一に、人間をモノにたとえることは、人権感覚の欠如と言えます。

第二に、女性を産む機械(産む道具)としてみることは、女性蔑視・女性差別の発想だと言えます。また、この観点は、優生学的見地に容易につながる危険性をもっているという意味でも問題です。

第三に、女性(人)が子どもを産むように、国(国家権力、政治家)が求めてもよいというのは、誤った認識です。産む・産まないの決定は、個々の女性(当事者各人)の権利であるという認識(リプロダクティブ・ヘルス・ライツ理解)が欠如しています。リプロダクティブ・ヘルス・ライツの考え方は、カップル及び個人が子どもを産むか産まないか、産むならいつ、何人産むかなどを自分で決めることができること、そのための情報と手段を得ることができること、強制や暴力を受けることなく、生殖に関する決定を行えること、安全な妊娠と出産ができること、健康の面から中絶への依存を減らすと同時に、望まない妊娠をした女性には、信頼できる情報と思いやりのあるカウンセリングを保障し、安全な中絶を受ける権利を保障すること、などを含んでいます。

第四に、子どもを多く産む女性(カップル)には価値がある(よいことだ)、産まない女性の価値は低いという、人の生き方に優劣をつけるのは、間違った考え方です。産みたくない人、産みたくても産めない人、不妊治療で苦しんでいる人、産み終わって今後産まない人、子どもをもっていない男性、トランスジェンダーや同性愛者など性的マイノリティの人々など、多様な人々がいます。どの生き方も、平等に尊重されるべきですが、柳澤発言は、子どもを多く産む女性(カップル)以外を、心理的に追い詰め、差別する結果をもたらします。

第五に、少子化対策を、労働環境や社会保障の制度改善として総合的に捉えず、女性の責任の問題(女性各人の結婚の有無や出産数の問題)と捉えることは、誤った認識です。子どもを育てることは、社会全体の責任にかかわることであって、私的・個別的な家族の責任としてだけ捉えてはなりません。

第六に、「産む(産まれる)」という「生命に関する問題」を、経済や制度維持のための問題(数の問題)に置き換えることは、生命の尊厳に対する危険な発想といえます。もちろん、出産を経済、数の問題としてとらえることが、社会政策を考える上で必要になる場合はありえます。しかし、社会政策はあくまで人権擁護の上のものでなくてはならず、生命の尊厳への繊細な感性を忘れて、出産を国家や経済や社会保障制度維持のための従属的なものとみなすことは、本末転倒した、人権侵害的な、かつ生命に対する傲慢な姿勢です。

以上六点すべてに関わることですが、戦前の「産めよ、増やせよ」の政策が「国家のために兵士となり死んでいく男/それを支える女」を求め、産児調節を危険思想としたことからも、私たちは個人の権利である生殖に国家が介入することに大きな危惧の念を抱いています。
柳澤大臣の発言にみられる考え方は、安倍首相の「子どもは国の宝」「日本の未来を背負う子ども」「家族・結婚のすばらしさ」などの言葉とも呼応するものであり、現政権の国民に対する見方を端的に表しているものと言えます。2001年の石原慎太郎「ババア」発言、2002年の森喜朗「子どもをたくさん生んだ女性は将来、国がご苦労様といって、たくさん年金をもらうのが本来の福祉のありかただ。・・・子どもを生まない女性は、好きなことをして人生を謳歌しているのだから、年をとって税金で面倒をみてもらうのはおかしい」発言も同じ視点でした。産めない女性に価値はないとしているのです。少子化対策が、国のための子どもを産ませる政策となる懸念を強く抱かざるを得ません。

小泉政権に引き続いて、現安倍政権も、長時間労働や格差、非正規雇用差別を根本的に改善しようとせず(パート法改正案はまったくの骨抜きになっている)、障害者自立支援法や母子家庭への児童扶養手当減額、生活保護の母子加算3年後の廃止などによる、障がい者や母子家庭いじめをすすめ、格差はあっていいと強弁し、経済成長重視の新自由主義的優勝劣敗政策をとり続けています。ここを見直さずに、女性に子どもを産めと言うことこそ問題なのです。したがって、今回の発言は、厚生労働省の政策そのものの問題を端的に示していると捉えることができます。

以上を踏まえるならば、安倍首相が、柳澤大臣を辞職させず擁護することは、少子化対策の改善への消極性を維持するということに他ならず、また世界の女性の人権運動の流れに逆行することに他なりません。以上の理由により、柳沢伯夫厚生労働大臣の速やかな辞職と、少子化対策の抜本的変更を強く求めるものです。

以上

NewsLetter 第109号 2007年2月発行

日本女性学会NewsLetter

(*会員に送付しているペーパー版の「学会ニュース」とは内容が一部異なります)

女性学会ニュース第109号[PDF] 2007年2月発行


 

学会ニュース
日本女性学会 第109号 2007年2月

◇次回大会予告

2007年6月9日(土)・10日(日)

会場

法政大学 市ヶ谷キャンパス

東京都千代田区富士見2-17-1
JR総武線「市ヶ谷駅」または「飯田橋駅」から徒歩10分
東京メトロ:市ヶ谷駅または飯田橋駅下車徒歩10分
都営新宿線市ヶ谷駅徒歩10分
都営大江戸線飯田橋駅徒歩10分

シンポジウム

バックラッシュをクィアする
—性別二分法批判の視点から—

・大会日程

1日目 6月9日(土)
13:00〜16:30(予定) シンポジウム
その後総会、懇親会
2日目 6月10日(日)
10:00〜12:00(予定) 個人研究発表
13:00〜15:00(予定) ワークショップ

* 保育を予定しています。詳細は次号をご覧ください。

個人研究発表とワークショップ申込受付について

タイトルと発表の概要(200字程度)・発表時に使用する機材(機材は希望にそえない場合があります)を記載して、3月20日までに、ニューズレター担当の木村涼子・伊田久美子まで、メールかファックスでお申し込みください。
ワークショップ :木村涼子 kimura●hus.osaka-u.ac.jp fax:06-6879-8115
個人研究発表 :伊田久美子 idak●hs.osakafu-u.ac.jp fax:075-791-9273
(●を@に書き換えてください)

* ワークショップは、参加者との共同作業でテーマを発展させていく取り組みであり、個人報告とは性格の異なるものです。

* 個人研究発表は、共通テーマでのパネル応募も可能です。人数は3人以上とします。各報告の発表時間の公平性と質問の時間を十分にとることにご留意いただき、時間の配分、司会者等を申込者で設定してください。

・大学院生等への旅費補助について

ワークショップ、個人研究発表をされる方で、学生・院生・OD等、常勤職に就いておられない方には、学会より旅費の補助をします(総額10万円を、人数と距離に応じて配分しますので、補助金額は未定です)。希望される方は、報告申込のさい、「旅費補助希望」と明記してください。
詳細は次号をご覧ください。

◇ 大会シンポジウム趣旨説明

パ ネ リ ス ト :井上輝子、クレア・マリィ、風間 孝
コ メ ン テ ー タ ー :金井淑子、田中 玲
コーディネーター・司会 :釜野さおり、伊田久美子

ジェンダーフリー・バッシングには、「男女共同参画」や「ジェンダー」概念への反感だけでなく、ゲイ、レズビアン、バイセクシュアル、トランスジェンダーへの嫌悪感(ホモフォビア、レズボフォビア、バイフォビア、トランスフォビア)が根深く含まれている。このことは、バッシングが性的少数者を含むセクシュアリティのありかたを攻撃の対象としていること、すなわち、性別二分法規範と相容れない性のありかたやその規範を疑問に付す実践に対する攻撃であることを示しているといえるだろう。

しかしながら、バッシングに対するフェミニズム側からの対抗言説は、これらの「フォビア」を分節化し、そのうえで十分な批判や反論を行ってきただろうか。また、あえて触れぬことで、「フォビア」を温存する傾向はなかっただろうか。「フォビア」や「セクシュアリティ」への対応の不十分さは、ある意味でバックラッシュに対抗する上での「アキレス腱」であり、そこをバックラッシュ側につけこまれてきたとも考えられる。

また、ジェンダーフリー・バッシングとほぼ同時期に生起した「過激な」性教育バッシングは、近年の若者の性の「乱れ」や、性的少数者に焦点を当てた教育実践への批判をつうじておこなわれてきた。性教育バッシングの顕在化に対して行政や学校現場では、これらの動きを意識するあまり、これらの教育実践を規制しようとする風潮も生じている。「過激な」性教育バッシングもまた、若者の性や「フォビア」を含むセクシュアリティに関して議論が不十分なところを狙って行われているのである。性教育バッシングに対抗するには、若者の性や「多様な」性のありかたを含んだ、セクシュアリティそのものをどのように認識していくのかという根本的な議論が必要とされている。

ジェンダーフリー・バッシング、そして「過激な」性教育バッシングからなる一連のバックラッシュに対抗するには、ジェンダーとセクシュアリティを切り離すことなく、その関係性について改めて考え、認識を深めることが必要とされているのである。

本年度の大会シンポジウムにおいては、クィア・スタディーズのアプローチ、すなわちジェンダーとセクシュアリティの非因果的であるが切り離すことのできない関係を問い、かつジェンダーやセクシュアリティの認識における二元論的な図式(性別二分法規範)を問うていくアプローチを踏まえつつ、(1)バックラッシュにおけるジェンダーとセクシュアリティの絡み合いを正面から取り上げ、(2)ジェンダーへの焦点化に偏りがちであったバックラッシュへの対抗言説にセクシュアリティの視点を導入する意義を確認し、(3)そのことがバックラッシュに反撃するうえで不可欠であることを共有していきたい。

(風間 孝)

◇教育基本法「改正」に関する緊急声明についての報告

昨年11月に教育基本法「改正」が強引に進められた。事態を憂慮した第14期幹事会は、女性学研究の立場からこの「改正」に関する緊急声明を発表した。

以下に声明文全文を掲載し、合わせて教育基本法「改正」問題に関する動向を報告する。

(幹事会)

教育基本法「改正」に関する緊急声明

11月16日、教育基本法改正案は、野党欠席という異常事態の下、自民・公明の連立与党による単独採決によって衆議院を通過し、現在、参議院での審議に入っている。教育に関わる憲法とも言われる重要な法律の改正が、十分な審議を尽くさないままに遂行されようとしていることに対して、日本女性学会はここに声明を発するものである。

今般の教育基本法「改正」の与党案については、実に多くの個人および団体から疑問や反対意見・声明が提出されており、議論すべき点は多方面にわたっている。改正案には、日本女性学会が結成の柱とする「あらゆる形態の性差別をなくす」という観点からも、看過できない種々の問題点がふくまれている。

まず、現行第5条「男女共学」(「男女は、互いに敬重し、協力しあわなければならないものであって、教育上男女の共学は、認められなければならない」)の削除は、教育分野における男女平等の根幹をゆるがすものである。この条項は、戦前の学校教育システムが男女別学・別学校体系により女性差別を制度化していたことへの反省に基づき、男女共学の基本を謳ったものである。現在もなお、高等教育進学率における男女間格差や、後期中等教育および高等教育での専攻分野における男女比率のアンバランスなど、就学経路上の男女平等を確立する課題は山積している。女性学研究は、そうした就学経路上の男女格差が社会的・文化的に生み出されるプロセスや、教育における男女間格差が雇用などの性差別の問題とつながっていることなどを明らかにしてきた。第5条の削除は、それらの課題解決の進展を阻むのみならず、男女特性論に基づいた公立の別学校を新たに誕生させるなど、男女をことさらに区別した教育を展開させる誘因になるのではないかと強く危惧する。

その危惧は、現行法には存在しない「家庭教育」と「幼児期の教育」という二つの新設条項についてもあてはまる。「父母その他の保護者」の「子の教育」に関する「第一義的責任」をさだめた第10条「家庭教育」と、「幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものである」と謳った第11条「幼児期の教育」は、教育や福祉の分野を、国家の責務から「家庭」の責務に転換していく方向性をもつものであり、さらには「母性」や固定的な性別役割分担の強調につながる危険性がある。

一方、改正案は、第2条「教育の目標」第3号(「正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと」)の中に、現行法には含まれていない「男女の平等」という理念を掲げている。しかし、そもそもこの第2条そのものが、国民に求められる「徳目」をさだめる性格をもち、私たちの精神的自由を侵す危険性をはらんだものである。男女平等は国民にとっての権利であり、名宛人を国家とする教育基本法においては、「教育上男女の平等は保障されなければならない」といった国家の責務をさだめる条項として位置づけられるべきである。にもかかわらず、改正案における「男女の平等」は、国民にもとめられる「徳目」として掲げられており、その位置づけには大きな疑問が残る。

同じく第2条第5号(「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」)は、愛国心を強制するものとして幅広い抗議を巻き起こしているが、この条項については性差別の撤廃という観点からも、重大な問題がある。この条項に含まれる「伝統と文化の尊重」という文言は、近年のジェンダー・フリー・バッシングのなかでさかんに使われているフレーズであり、「伝統や文化」といった多義的でしかあり得ない概念によって定義された「教育の目標」条項が、今後政治的に利用されていく可能性は極めて高い。その可能性は第2条全体に対して言えることであり、この条項と、現行法第10条「教育行政」を「改正」した第16条第1項(「教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない」)とが連動することにより、「教育の目標」に沿わないと解釈された教育実践や教育運動は、「不当な支配」に相当するものとして排斥されていくだろう。現行の教育基本法第10条が、戦前の反省を踏まえて目指した、国家権力の中枢に近いところに位置する「官僚とか一部の政党」(昭和22年3月14日衆議院・教育基本法案委員会・政府委員答弁より)による「不当な支配」の排除とは、まったく逆の方向への「改正」と言わざるを得ない。

多くの課題を残したまま、広範な抗議の声を無視して、政府与党は、近々12月8日にも教育基本法改正案の成立を目指している。日本女性学会は、性差別の撤廃という設立の趣旨を貫く立場から、今般の教育基本法「改正」の動きに強く抗議するものである。

2006年12月 1日
日本女性学会 第14期 幹事会

◇教育基本法「改正」の経緯とこれから

船橋 邦子

2006年12月15日、1947年教育基本法は第165臨時国会で死刑宣告されてしまった。防衛庁昇格法とともに国の方向性を決める重要な法案が「改正」の理由も不明、内容の討議はほとんどなされず、人々の理解が得られないまま、数に物を言わせて成立した。いじめゼロ報告、未履修問題、タウンミーティングでのやらせ問題と続出する常識を逸した事態に対して国会答弁で他人事のように「規範意識の欠如」を連発した文部科学大臣は、その原因が47年教育基本法にあるとして葬り去った。それにしても教職員組合も市民グループも反対運動は本当によく頑張ったと思う。11月初めから国会前でハンストに入った人々を含め国会前集会には毎日1000人以上が参加したしリボンとキャンドルによる「ヒューマンチェイン」には5000人が集まった。(ただしこの動きが統一されなかったのは残念に思う)しかしこれらの反対運動についてマスメディアは徹底して無視し続けたために、多くの市民は、この問題の重要性に気づいていなかった。また私は何度か国会傍聴をしたが議論の内容は本当にお粗末、ただの時間稼ぎ、真剣さもなく国民を愚弄していた。とくに衆議院特別委はひどかった。民主党が「改正」を前提としていたことは今回「改悪」を許した最大要因だった。参議院特別委では、国会外での反対運動の広がりとやらせ問題などの実情が明らかになるにつれ容易に採択というわけにいかなくなった。12月5日、参議院特別委員会での神本美恵子さんは日本女性学会幹事会の「緊急声明」を手に「改正」案は、明らかにジェンダー平等政策の撤退であることを指摘した。しかし初めに成立ありき、急速に大きくなってきた反対の声は黙殺された。

今後の課題として現憲法下では新法は違憲立法であることに間違いない。廃案にしていくためには新法への批判的世論を高めることが重要だ。また1月末に始まる通常国会に学校教育法をはじめ関連法案が国会に提出されることになる。新法第17条教育振興計画を策定にも取り掛かるだろう。新法の実効性をもたせないために関連法案成立をさせないこと、監視する運動も必要。しかしなんといっても憲法改悪を阻止していくために統一地方選、7月の参議院選で安倍首相を退陣させること、そのための野党の連携が今、一番必要だと痛感している。今回のように数の暴挙を許さないために。

■ 幹事のお仕事(2)ニューズレター

−幹事会活動の実際を担当幹事が紹介します。

ニューズレターは年間4回発行します。学会大会や総会の案内、報告がメインの記事となります。大会が年1回となってからは会員の研究会への助成を行っていますが、そうした研究会のお知らせや報告、それに会員に有用な情報の提供や会員相互の情報交換の場として機能することを心がけております。

もうひとつこの間心がけているのは、幹事会が何をやっているかを会員にできるだけお知らせすることです。そのために数年前から幹事会議事録を掲載しております。また今期は「幹事のお仕事」というコラムを設けて、学会運営のさまざまな事務仕事を紹介しています。

メールのおかげで、執筆者や印刷所との原稿のやりとりは本当に楽になりました。それでもときどきは、お世話になっている京都の印刷所へ出向くことも必要です。原稿を集め、印刷所に送り、校正のやりとりをし、一段落するとまもなく次の号の準備をしなければならない時期がきます。けっこう1年中仕事の切れ目がない状態です。

幹事会だけでなくできるだけ会員のみなさんに書いていただくことを目指しています。原稿の依頼があれば、是非ご協力くださいますよう、お願いいたします。

(伊田久美子)

■研究会報告「暴力AV研究会」   11月24日

11月24日金曜日都内で開かれた暴力AV研究会は、日本女性学会から1人の参加者を得、APP研究会会員の参加もあり、企画者の司会とインタビューによる有益で濃密な2時間強の時間をもつことができた。報告者の誠実で詳細な報告により重要な事実をたくさん知ることができた。とくに、プロダクションとメーカーの役割の違いよくわかり、大きな収穫があった。
事前に用意した質問への丁寧な答えは、一般には知られていないことが多く、AV業界の実態と問題点が、現場の方から網羅的に語られた、初めてのものになると思われる。

(二瓶由美子)

*研究会(会員企画)を随時募集しています
研究会担当幹事にお申し込み下さい。
伊田広行(henoru●tcn.zaq.ne.jp)(●を@に書き換えてください)

■寄贈図書紹介

狩谷あゆみ編 『不埒な希望 ホームレス/寄せ場をめぐる社会学』 松籟社 2200円
ベル・フックス/里見実訳 『自由の実践としてのフェミニズム教育 とびこえよ、その囲いを』 新水社 2800円+税
岩淵宏子、長谷川啓 『愛・性・家族』 東京堂 2200円+税
田間泰子 『「近代家族」とボディ・ポリティックス』 世界思想社 3,200円+税
女性の家HELP(編) 『希望の光をいつもかかげて:女性の家HELP20年』 日本キリスト教婦人矯風会 1000円
杉浦郁子・野宮亜紀・大江千束(編著) プロブレムQ&A
『パートナーシップ・生活と制度』【結婚、事実婚、同性婚】
緑風出版 1,700円+税

お知らせ

柳澤厚生労働大臣の「産む機械」発言に対する抗議声明文を、会員の大本良子さんのご協力を得て2月2日に幹事会名で提出しました。声明文は学会ホームページに掲載されています。ニューズレター次号にも掲載する予定です。

<再 掲>
学会誌『女性学』の販売促進にご協力ください

第14期幹事会学会誌販売促進担当幹事 武田万里子

かねてより学会誌『女性学』の売れ行きが低迷しており、学会財政は厳しい状況が続いています。在庫も拡大し、倉庫保管料を新たに負担せざるをえない状況になっています。
女性学の普及のためにも、会員の皆様に、学会誌の購入・販売促進にご協力をお願いいたします。

1. 学会誌のバックナンバーをお持ちでない方は、同封の「注文書」で、新水社に直接ご注文ください。割引があります。
2. 勤務校などの図書館に女性学のバックナンバーがそろってない方は、欠号をご購入ください。
3. 現在創刊号が品切れです。創刊号を復刻し、創刊号から13号まで全号揃セット定価31000円(直接販売の場合、割引あり)で販売予定です。一定数の予約注文が取れ次第、復刻いたします。創刊号が復刻されれば、バックナンバーを図書館などにセット購入していただける方は、同封の「予約注文書」を、学会事務局 (Fax:047(370)5051)まで、お送りください。

会員の皆様の、ご協力をお願いいたします。

研究会のお知らせ

2007年の大会シンポジウム『バックラッシュをクィアする〜性別二分法批判の視点から〜』に向けて、発表予定者を中心に、事前研究会をしたいと思います。
参加はどなたでも可能です。なお参加希望者は、事前に研究会担当幹事の伊田広行( henoru●tcn.zaq.ne.jp )あてにご連絡ください。(●を@に書き換えてください)
なお、当日の駆け込み参加もOKです。

発題予定
風間孝「若者のセクシュアリティと性的マイノリティ—性教育バッシングの影響を考える—」
他1、2名
日時:2007年3月31日(土曜日)10時から12時半
場所:国立社会保障・人口問題研究所(日比谷国際ビル6階)

投稿日: 2007年2月1日 カテゴリー: NewsLetter

教育基本法「改正」に関する緊急声明

11月16日、教育基本法改正案は、野党欠席という異常事態の下、自民・公明の連立与党による単独採決によって衆議院を通過し、現在、参議院での審議に入っている。教育に関わる憲法とも言われる重要な法律の改正が、十分な審議を尽くさないままに遂行されようとしていることに対して、日本女性学会はここに声明を発するものである。

今般の教育基本法「改正」の与党案については、実に多くの個人および団体から疑問や反対意見・声明が提出されており、議論すべき点は多方面にわたっている。改正案には、日本女性学会が結成の柱とする「あらゆる形態の性差別をなくす」という観点からも、看過できない種々の問題点がふくまれている。

まず、現行第5条「男女共学」(「男女は、互いに敬重し、協力しあわなければならないものであって、教育上男女の共学は、認められなければならない」)の削除は、教育分野における男女平等の根幹をゆるがすものである。この条項は、戦前の学校教育システムが男女別学・別学校体系により女性差別を制度化していたことへの反省に基づき、男女共学の基本を謳ったものである。現在もなお、高等教育進学率における男女間格差や、後期中等教育および高等教育での専攻分野における男女比率のアンバランスなど、就学経路上の男女平等を確立する課題は山積している。女性学研究は、そうした就学経路上の男女格差が社会的・文化的に生み出されるプロセスや、教育における男女間格差が雇用などの性差別の問題とつながっていることなどを明らかにしてきた。第5条の削除は、それらの課題解決の進展を阻むのみならず、男女特性論に基づいた公立の別学校を新たに誕生させるなど、男女をことさらに区別した教育を展開させる誘因になるのではないかと強く危惧する。

その危惧は、現行法には存在しない「家庭教育」と「幼児期の教育」という二つの新設条項についてもあてはまる。「父母その他の保護者」の「子の教育」に関する「第一義的責任」をさだめた第10条「家庭教育」と、「幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものである」と謳った第11条「幼児期の教育」は、教育や福祉の分野を、国家の責務から「家庭」の責務に転換していく方向性をもつものであり、さらには「母性」や固定的な性別役割分担の強調につながる危険性がある。

一方、改正案は、第2条「教育の目標」第3号(「正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと」)の中に、現行法には含まれていない「男女の平等」という理念を掲げている。しかし、そもそもこの第2条そのものが、国民に求められる「徳目」をさだめる性格をもち、私たちの精神的自由を侵す危険性をはらんだものである。男女平等は国民にとっての権利であり、名宛人を国家とする教育基本法においては、「教育上男女の平等は保障されなければならない」といった国家の責務をさだめる条項として位置づけられるべきである。にもかかわらず、改正案における「男女の平等」は、国民にもとめられる「徳目」として掲げられており、その位置づけには大きな疑問が残る。

同じく第2条第5号(「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」)は、愛国心を強制するものとして幅広い抗議を巻き起こしているが、この条項については性差別の撤廃という観点からも、重大な問題がある。この条項に含まれる「伝統と文化の尊重」という文言は、近年のジェンダー・フリー・バッシングのなかでさかんに使われているフレーズであり、「伝統や文化」といった多義的でしかあり得ない概念によって定義された「教育の目標」条項が、今後政治的に利用されていく可能性は極めて高い。

その可能性は第2条全体に対して言えることであり、この条項と、現行法第10条「教育行政」を「改正」した第16条第1項(「教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない」)とが連動することにより、「教育の目標」に沿わないと解釈された教育実践や教育運動は、「不当な支配」に相当するものとして排斥されていくだろう。現行の教育基本法第10条が、戦前の反省を踏まえて目指した、国家権力の中枢に近いところに位置する「官僚とか一部の政党」(昭和22年3月14日衆議院・教育基本法案委員会・政府委員答弁より)による「不当な支配」の排除とは、まったく逆の方向への「改正」と言わざるを得ない。

多くの課題を残したまま、広範な抗議の声を無視して、政府与党は、近々12月8日にも教育基本法改正案の成立を目指している。日本女性学会は、性差別の撤廃という設立の趣旨を貫く立場から、今般の教育基本法「改正」の動きに強く抗議するものである。

日本女性学会 第14期 幹事会
2006年12月 1日

NewsLetter 第108号 2006年11月発行

日本女性学会NewsLetter

(*会員に送付しているペーパー版の「学会ニュース」とは内容が一部異なります)

女性学会ニュース第108号[PDF] 2006年11月発行


 

学会ニュース
日本女性学会 第108号 2006年11月

■特集 バックラッシュ関連の動き

連携して「反撃」を−「今こそいるねんジェンダー平等 いらんてそんなバッシング」シンポジウム報告

森屋 裕子

各地、各界で頻発するここ3.4年のバックラッシュの動きに対して、反論のための出版活動をし、雑誌の特集を組み、集会や抗議活動を繰り広げるという形の「反撃」が大きなうねりの形で盛り上がったのが、今年の春から夏だったのではないのだろうか。関西を中心に活動している世界女性会議ネットワーク関西(通称:ネッ関)も、「何かしなければ」の思いにかられ、シンポジウムを企画した。その成果が、7月16日にドーンセンター(大阪府立女性総合センター)で開催された「今こそいるねんジェンダー平等、いらんて!そんなバッシング」である。会場は遠方からの参加者も含めて立ち見が出るほどの人で埋まり、「何とかしよう!」という参加者の熱気が強く感じられた。
シンポジウムは、落合恵美子さん(京都大学教員)の講演「世界の分岐と『ジェンダー』をめぐる政治」における日本の「家族主義」の弊害についての指摘と「伝統的家族」にしがみつくバックラッシュ派への批判で始まり、伊田広行さん(立命館大学非常勤講師)による国内のバックラッシュの背景と意味の分析(演題「ジェンダーフリー・バッシングの背景と意味」)、鶴田敦子さん(聖心女子大学教員)によるジェンダー教育の歴史と教科書検定という権力の行使によるバックラッシュ現象の浸透の指摘(演題「ジェンダーをめぐる教育の状況とこれから」)という順序で進行した。その後、自治体行政や地方政治(森屋裕子/世界女性会議ネットワーク関西)、条例制定(二木洋子さん/高槻市市議)、性教育(野村啓子さん/中学校教諭)、労働(屋嘉比ふみ子さん/働く女性の人権センターいこ☆る)、大峰山女人禁制(大野京子さん/I女性会議なら)の現場からの報告が行われ、全体で討論した。最後に伊田久美子さん(大阪府立大学教員)が「ジェンダー主流化の動きは止まらない」としめくくり、『今こそいるねん「ジェンダー平等」宣言』(『いるねん宣言』)を全員で採択して、シンポジウムは終了した。
ネッ関は、第四回世界女性会議に参加した関西在のグループや個人が連携し、北京会議の成果を日本の政策に活かしていくことを目的に作られたロビイングネットワークである。今まで、各地の計画や条例などへの提言活動の他、横山ノック前大阪府知事のセクシュアルハラスメント事件にあたっての「怒る女たちの会」や男女共同参画社会基本法制定に際しての「エエモンつくろう男女平等基本法」の動きなどを通じて、活動家、活動グループ、専門家、地方議会議員を横断的につなぐ役割を果たしてきたが、バックラッシュ状況下では各地での個別の対応に追われ、連携した広い動きをつくることはできないでいた。今回のシンポジウムは、社会の根本枠組みをかけた攻撃への「反撃」にこそ横断的ネットワークが有効であること、「連携とパワーの結集」は「反撃」と「参画」の両面でなされる必要があることを改めて確認するよい機会となった。

福井・ジェンダー図書排除事件から

寺町 みどり

事件は、2005年11月、男女共同参画推進員からの「生活学習館の図書の内容を確認し不適切なものは排除するように」との申し出に始まる。福井県は「情報の提供は学習する上で必要である」と公式に回答し却下したが、その後153冊の排除本リストを持ち込んだ推進員の排除要求に屈し、2006年3月下旬、図書を書架から撤去した。
5月に事件の一報が届いた翌日、わたしは福井県敦賀市議の今大地はるみさんと関連の「公文書のすべて」を情報公開請求。同時に、福井県に対し「住民監査請求」と「抗議文」提出というダブルアクションを起こした。
県は153冊の図書のすべてを「誹謗中傷や人権侵害、暴力的表現などの公益を著しく阻害するものがないか」確認し、問題がないとして書架に戻した。
本を戻せば一件落着ではない。図書の排除は「思想・表現の自由および知る権利の侵害」であり、図書の内容の精査は「検閲」である。 上野千鶴子さん、江原由美子さんなど排除本リストの著者・編集者等で請求した情報公開では、5枚の「図書リスト」は「公にすることにより、個人の権利利益を害するおそれがある」としてすべて「黒塗り」。わたしたちは処分を不服として、情報非公開処分取消訴訟(原告20人/代表・上野千鶴子さん)の準備をはじめた。この動きを知った福井県は153冊の図書リストを公開した。勝てると確信していた提訴は「幻の訴訟」となり、わたしたちは8月26日に予定していた提訴集会を抗議集会に変更して開催した。集会では「福井県男女共同参画推進条例」に基づく「苦情申出書」を呼びかけ、80名(42人は福井県民)で提出した。(事件の詳細は「みどりの一期一会」http://blog.goo.ne.jp/midorinet002/<福井・焚書坑儒>)。
図書排除の抗議運動は、今大地さん、上野さん、行政訴訟の準備をすすめた寺町知正さん、事務局のわたしの4人を中心にすすめてきた。
自治体の政策は「条例」が根拠であり、図書の選定に国の権限は及ばない。いかなる理由であれ、権力による図書の選別・排除は許されない。図書の排除とその後の混乱は、行政のことなかれ主義と隠蔽体質が引き起こした。わたしたちは迷走する福井県に対し、法や制度を熟知し、公的な手法でたたかってきた。
恣意的な図書排除(選別)はどこでも起こりうることだ。このような動きには、まず「図書の選別・排除は違法と認識すること」が不可欠だが、さらに、(1)女性センターなどの公正な運営ルールと図書選定の透明性の確保、(2)法・制度を熟知して市民が日常的に行政や議会の動きを監視、(3)公的手段を使って対抗するノウハウの共有、(4)指定管理者委託の「公の施設」を情報公開制度のブラックボックスにさせないこと、などが必要だと思う。情報公開制度を使って事実関係を精査し、問題を明らかにすることによって、有効な解決手段を選択することが可能になる。
わたしは学問とは無縁の市民だけれど、現場の市民運動でノウハウを培ってきた。法や直接民主主義の制度をつかった現場の実践と研究者も含めたネットワークを広げ、知恵と手法を出しあえば、各地で起きる組織的なジェンダー・バッシングに対抗できると思っている。今回の事件の成果は、その一例である。

「ジェンダーフリー・バッシング」を打ち返す出版動向

青山 薫

「ジェンダーフリー」という用語や関連図書の公の場からの排除は、2000年ごろから徐々に広がり、今年初頭には、男女共同参画局が国会質疑を受けた「事務連絡」として、この使用を地方公共団体において「使用しないことが適切」と表明した。とくに今年相次いだジェンダーフリー・バッシングに反論する書籍や記事の刊行は、このような主流政治の場でのあからさまな反動に対するフェミニズム側からの異議申し立てである。
『Q&A 男女共同参画/ジェンダーフリー・バッシング』(資料も充実。明石書店)、『「ジェンダー」の危機を超える!』(青弓社)、『バックラッシュ!』(双風社)、『ジェンダー・フリー・トラブル』(白澤社)、『ジェンダーフリーの復権』(新風社)、『ジェンダーフリー・性教育バッシング』(大月書店)、『ジェンダーフリーは止まらない!』(松香堂書店)など、バッシングに対抗する数多の出版物を読むと、ポスト植民地主義の洗礼以降、その内部の差異を認識することにこそ重きを置いてきたフェミニズム論壇の、久びさの必然的連帯が浮かび上がって心強い。裏を返せば、かく言う私などフェミニズムの中で差異の承認を渇望してきたクィア・フェミニストさえ、連帯を恐れてはいられないほどただならぬ状況になってきた、ということでもある。与党自民党の「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」は、人びとの不安に依拠しスケープゴートに社会問題の責任をかぶせる典型的なプロパガンダの手法をもった、ジェンダーフリー・バッシングの一主柱だが、私たちは、この座長が首相を務める社会に生きているのだ。
ここへきて、フェミニストの間でも解釈と使用するか否かの見解が分かれている「ジェンダーフリー」という言葉に対しても、「同意はせずとも弾圧は許さない」という態度表明が続いている。「ジェンダーフリー」の再定義・再採用が始まっていると言えるだろう。
この流れの中で、フェミニズム側がほぼ共通に認識している主要課題は、(1)ジェンダーフリー・バッシングが「過激な」性教育をラベリングに利用できた理由の追及(2)政治経済再編によって新しい下層階層に位置づけられた(とくに若年男性)との連帯をどう実現するか(3)物事の論理的理解を避ける社会的傾向の中でメディアと教育にどう影響力をもつか、にまとめることができそうだ。どの課題も深遠だが、不遇をかこつマジョリティがジェンダーフリーやフェミニズムを標的としてその不満を発散させる根拠に向き合い、これを克服する道程を探すことに関わっている。とくに(1)に関連して、ジェンダーの力学との関係上、セクシュアリティが人間にとっての危険因子として扱われ続けることがいかに不毛かを再考させられる。この文化に対するオルタナティブを、フェミニストが追及する必要性を強調したい。

■幹事会活動紹介「幹事のお仕事」

*幹事会って何をしているの?幹事をまだ経験しておられない会員の方々には、幹事会が一体どんな仕事をしているのか、年間を通しての動き方など、わかりにくい面があると思います。ニュースレターでは、幹事の仕事を役割分担ごとに紹介する、新コーナーを新設することにしました。第一回は「庶務」です。

「第一回 庶務の仕事」

釜野 さおり

今期(第14期)は、海老原暁子さんと釜野が庶務を担当しています。「庶務」では、幹事会運営に関わる事務全般ならびに幹事内や幹事会と学会事務局(ジョジョ企画)間の連絡・調整をする役割を担っています。私がこの役を引き受けた2年前、どなたからか、庶務は学会の運営が円滑に進むように全体に目配りしている必要があると教えていただきました。しかし、なりたての頃は、幹事会にどういう仕事があるのか、いつ頃何が起こるのか、いつまでに何をすべきなのかといったことが全くわからず、「目配り」するどころではありませんでした。2年のサイクルを終えて、振り返ってみて初めて「これが庶務の役割かな」と認識し始めたというのが正直なところです。
日常的な仕事はシンプルで、具体的には、総会議案書の作成、幹事会の会合の準備、郵便物・問い合わせへの対応、入会申込書の扱い、学会書類の保管が挙げられます。
まず、総会の議案書は、年次大会の1ヶ月前くらいに原案を幹事のメーリングリスト(以下、ML)に流し、必要に応じて各担当の幹事に執筆・補足を依頼し、代表幹事に確認を取りながら完成させ、必要部数を印刷して大会会場に持参あるいは郵送します。
年に6回程度開催される幹事会の際には、継続審議事項、ML上での連絡事項や議論中の事項等を拾い上げ、議案の原案を作成し、MLで他の幹事にインプットを依頼し、完成させます。議案や各幹事が持参する配布資料の印刷、会場の準備、欠席した幹事への資料の送付、場合によっては会議の日程調整も行います。
郵便物やファックスは、学会事務局から転送されてくるものを取捨選択し、担当の幹事や幹事会全体に情報を流します。例えば講演会やイベントについては学会ニュース担当やホームページ担当の幹事に連絡し、他の関連資料は会議の際に回覧します。また、必要に応じて、書類への記入や各種調査への回答もします。その他の問い合わせや取材申込みについては、ML上や幹事会の席で全体に計って対応します。入会申込みに関しては、学会事務局から届く申込書・添付資料を幹事会の席で回覧し、承認の有無を学会事務局に伝え、その後の手続きをお願いします。
学会事務局との契約書、学術刊行物助成金の応募書類、入会申込書、幹事会や総会の議事録や配布資料なども庶務で保管しています。今後は、さまざまな書類をPDF化し、効率良く保管できる体制を整える予定です。また、先々の幹事引き継ぎも念頭に置き、幹事会・学会の年間スケジュールや各担当の仕事内容を明文化した、幹事用の手引きも整備して行きたいと考えています。
以上が、本学会の「庶務係」の仕事です。仕事の性質上、他の幹事の協力がなければ動きのとれないことが多いのですが、それぞれご多忙な中、適宜対応してくださるおかげで、今まで続けてくることができました。力量不足で、なかなか全体の目配り役をこなすまでには至りませんが、会員の皆様には、今後とも温かな目で見守っていただければ幸いです。

■研究会活動報告と次回のご案内

「暴力AV研究会」

二瓶由美子

日本女性学会の研究会補助制度による補助を受けて、「暴力AV研究会」を2006年6月25日(日)、東京都内において開催した。参加者は8名と少人数だったが、活発な質疑応答がなされ、今日の暴力AV制作現場の実態を知る有意義な機会となった。
今日、「レイプもの」「監禁もの」と呼ばれる、女性への様々な虐待を映像化したビデオやDVDの存在とその社会的影響について問題視する声が広がりつつある。実際に、AV撮影現場における集団強姦と拷問・虐待によって重い傷害を受け、後遺症によって車椅子生活を余儀なくされた被害女性の訴えによる事件(現在公判中)も起きている。そこで、そのAV会社のAV制作現場にライターとして居合わせ、壮絶な現場の暴力を目の当たりにして問題提起したMさんの経験、AV女優と呼ばれる女性たちの労働の実態についてお聞きした。現場の映像を使用しての報告により、参加者は構造的な暴力の存在について詳細な事実を知ることになった。「つぶす」という表現で、「使い古されたAV女優」が暴力AV出演を最後に映像から消えていく現実は、女性の身体と尊厳が搾取されている実情を明らかにした。
また、11月24日(金)午後6時から、新たに、「暴力AV研究会その2」を企画している。この回では、AV女優派遣事務所のマネージャーから、AV女優と呼ばれる女性たちの派遣労働の実情をお聞きする予定だ。女性学会会員のみなさまにも是非参加していただき、問題を明らかにしたいと考えている。
問い合わせ先:二瓶由美子 y-nihei●ssjc.ac.jp(●を@に書き換えてください)

お 知 ら せ

「お知らせ」欄は幹事会および会員等からの公共性の高い情報を掲載します。
掲載希望はニューズレター担当者までご連絡ください。
ニューズレター担当:
伊田久美子:idak●hs.osakafu-u.ac.jp
木村 涼子:kimura●hus.osaka-u.ac.jp
(●を@に書き換えてください)

■会員主催の研究会募集のお知らせ

(学会幹事会)

<応募要件>

  • 研究会の趣旨が女性学会の趣旨に適っているもの。
  • 少なくとも会員に対して、公開の研究会であること。
  • 研究会のタイトル、趣旨、企画者(会員個人・会員を含むグループ)、開催場所、開催日時、研究会のプログラム、全体の経費予算と補助希望額(2万円以内です)が決定していること。なお、未決定部分は少ないほど良いのですが、場所・プログラム・経費については予定=未決定の部分を含んでいても結構です。
  • 学会のニュースレター・ホームページに載せる「研究会のお知らせ」の原稿(25字×20行前後)があること。研究会の問い合わせ先を明記すること。
  • 研究会終了後に、研究会実施の報告文を学会のニュースレターとホームページに書いていただきます(研究会補助費は、その原稿提出後に出金いたします。)
  • 学会総会での会計報告に必要なため、支出金リストと、総額での企画者による領収書
  • 申し込みは、広報期間確保のために、原則として開催の3カ月前までに、研究会担当幹事まで、お願いいたします。詳細のお問い合わせも、研究会担当幹事まで。

研究会担当:伊田広行:田嶋陽子
連 絡 先:henoru●tcn.zaq.ne.jp (●を@に書き換えてください)

■会員からの寄贈図書

寄贈本で会員が著者もしくは編者である単行本新刊書誌情報を掲載します。

城西国際大学ジェンダー・女性学研究所 編 『ジェンダーで読む<韓流>文化の現在』 現代書館
2006年8月
1500円(税抜)
若桑みどり、加藤秀一、皆川満寿美、赤石千衣子 編著 『「ジェンダー」の危機を超える!徹底討論!バックラッシュ』 青弓社
2006年8月
1600円(税抜)
堀江有里 著 『「レズビアン」という生き方—キリスト教の異性愛主義を問う』 新教出版社
2006年9月
2200円(税抜)
水田宗子、長谷川啓、北田幸恵 編 『韓流サブカルチュアと女性』 至文社
2006年9月
2,381円(税抜)
永原浩行、れいのるず・秋葉・かつえ 編 『ジェンダーの言語学』 明石書店
2004年12月
2,500円(税抜)
唯物論研究協会 編 『ジェンダー概念がひらく視点:バックラッシュを越えて』 (唯物論研究年誌第11号) 青木書店 4,000円(税抜)

■学会誌『女性学』の販売促進にご協力ください

第14期幹事会学会誌販売促進担当幹事 武田万里子

かねてより学会誌『女性学』の売れ行きが低迷しており、学会財政は厳しい状況が続いています。在庫も拡大し、倉庫保管料を新たに負担せざるをえない状況になっています。女性学の普及のためにも、会員の皆様に、学会誌の購入・販売促進にご協力をお願いいたします。

  1. 学会誌のバックナンバーをお持ちでない方は、同封の「注文書」で、新水社に直接ご注文ください。割引があります。
  2. 勤務校などの図書館に女性学のバックナンバーがそろってない方は、欠号をご購入ください。
  3. 現在創刊号が品切れです。創刊号を復刻し、創刊号から13号まで全号揃セット定価31000円(直接販売の場合、割引あり)で販売予定です。一定数の予約注文が取れ次第、復刻いたします。創刊号が復刻されれば、バックナンバーを図書館などにセット購入していただける方は、同封の「予約注文書」を、学会事務局(Fax:047(370)5051)まで、お送りください。

会員の皆様の、ご協力をお願いいたします。

■2007年度日本女性学会大会予告

日 時:2007年6月9日(土)、10日(日)
場 所:法政大学(市ヶ谷キャンパス)
*詳しくは次号ニュースレターでお知らせします。

投稿日: 2006年11月1日 カテゴリー: NewsLetter

NewsLetter 第107号 2006年8月発行

日本女性学会NewsLetter

(*会員に送付しているペーパー版の「学会ニュース」とは内容が一部異なります)

女性学会ニュース第107号[PDF] 2006年8月発行


学会ニュース
日本女性学会 第107号 2006年8月

2006年度日本女性学会大会報告

(大阪府立女性総合センターと協催)
日 時:2006年6月10日(土)・11日(日)
会 場:大阪府立女性総合センター(ドーンセンター)

シンポジウム

「ジェンダーをめぐる暴力とトラウマ
—暴力への対抗としての、フェミニズムの希望のあり方」

パ ネ リ ス ト:宮地尚子、大越愛子、木村凉子
コーディネーター:伊田広行

大会シンポジウム報告

伊田 広行(コーディネーター)

今年の大会シンポでは、昨年のシンポを引き継ぎ、フェミニズムの暴力への視座を、トラウマなどを絡めて深めようとした。暴力が蔓延する中で、「フェミニズムの非暴力・平和主義」とはどのようなものであるのか。それを明らかにすることで、バックラッシュに対抗する、フェミニズムの存在意義が示せるのではないかと考えた。
当日のシンポでは、宮地尚子さんが、性暴力・DV被害者との臨床から学んだこととして、トラウマをめぐって少し詳しく報告した。それは、暴力というものを繊細かつ複雑にとらえるものであり、そのことがシンポ全体の基調となった。大越愛子さんからは、「女性国際戦犯法廷」が戦争犯罪・性犯罪を不問にしてきた構造的暴力体制や歴史観、不法国家、植民地主義、セクシズムなどどの全体を裁いたことが明らかにされた。それはフェミニズムが、構造的暴力体制を解体する思想に変容していることの確認であった。木村涼子さんからは、暴力的・非民主的な学校教育を、フェミニズムが、男女2分法の自明視の見直しや「声」の尊重の水準で問い直してきたこと、バックラッシュ派と教育の場を巡ってヘゲモニー争いがあることなどが報告された。
3者の問題提起自体に示唆するものが多く、とくに宮地さんの議論の端緒が紹介できたことは、フェミニズム・ジェンダー学にとって本シンポの大きな意義であったと思う。フェミニズムの主張が、みずからの権力性や単純性、知らないということの特権性などを自覚し、常に繊細なレベルで暴力や差別をとらえる方向に進んでいけば、バックラッシュを反面教師にいっそうフェミニズムの魅力と必要性が広く認識されていくであろうと思わせるものであった。
心残りもある。私としては、私たちの生き方を足元から問い直すものとしてのフェミニズムの非暴力思想を具体的に深めたい、権力的でないように生きること、ケア的に生きることの今日的な重要性の議論を、トラウマ論を受けて展開したかったのだが、時間の関係でそこまで論じられなかった。全体として、せっかく出された数々の視点を十分結び付けられず素材提供にとどまったこと、宮地報告を中心にして3者の議論を深くつなげるところにまで至らなかったという点が反省点である。シンポの中軸をもっとしぼっておくことが、コーディネーターには求められよう。今後の課題として明記しておきたい。
なお、会場からの質疑応答時間をもう少し増やすべきとの意見もきかれたが、そのためには、報告者をしぼり、全体の時間を延長させることが必要かと思われる。

2006年度日本女性学会シンポジウム感想

秋山 洋子

今回のシンポジウムのテーマ、とりわけ副題の「暴力の対抗としての、フェミニズムの希望のあり方」は、現在の状況の中で、私自身を含めて多くの人が手探りしているものをうまく集約しているように感じられた。ただ、そのテーマを3人のパネリストと限られた時間の中でどう展開するかは、かなり難しいことも予測できた。
精神科医として性暴力のサバイバーと向き合った経験にもとづく宮地尚子さんの報告は、暴力とそれが生み出すトラウマについて、ひとつ深いレベルで考えさせてくれるものだった。一般論ではなく、個別の被害体験によりそうことから出発した洞察にはハッとさせられることが多く、夏休みになったら紹介されていた著書を読んでみたいと思っている。
大越愛子さんはこれに対して、暴力の構造を大きく提示されたが、同時に、セクハラ事件を支援する中でのサバイバーとの複雑な関係にもふれられた。「私にできたのは一緒に飲むだけだった」というこの体験について、もうすこし突っ込んで聞きたかった。そうすれば、宮地さんの報告との接点がふくらんだのではないだろうか。
木村涼子さんの提起された教育の場における暴力も現在焦眉の問題だが、教育というテーマ自体が多くのものを含むので、このシンポの中には収まりきらなかったような気がする。学校をめぐる問題については、機会を改めて討議ができればと思った。

「シンポジウム ジェンダーをめぐる暴力とトラウマ
—暴力への対抗としてのフェミニズムの希望のあり方」に参加して

松島 紀子

暴力が及ぼすトラウマに接している臨床からの視点での宮地氏、広く暴力を捉えた上での暴力の構造化といった観点(思想、理念)より大越氏、フェミニズムの観点から学校教育と暴力を考える木村氏、それぞれご自分の経験や研究を通して興味深い話を聞くことが出来た。臨床、概念、構造化、教育としての暴力をそれぞれのパネリストたちが「暴力への対抗としてのフェミニズムの希望のあり方」を議論することがこのシンポの目的だったと思う。各パネリストの発言は興味深いが、全体を通してみると、未消化感が残った。暴力をどのようにとらえるのか、ということは暴力の定義にもつながるが、定義すること自体そこから取りこぼされてしまう被害を被る人たちも生じてくる。定義することの権力問題も浮上してくる。見える/見えないを含む暴力を、フェミニズムがどう考えていくのだろうか。宮地氏は「全てフェミニストらが背負わなくてもいい(もっと肩の力を抜いていいというニュアンスだと思う)」木村氏「女性学が積み重ねてきたことは少しずつ広がっている」そして大越氏は「ネットワークを作り声を上げていく大切さ」と語られた。
個々のパネリストの発言を、いかに分野の違う領域間で相互的に深められるかが、シンポジウムの本来のおもしろさと思う。そういう意味では今回のシンポジウム、さらなる課題を次に残したのではないだろうか。

緩やかでしなやかな関係を紡ぐ、暴力への対抗

岩本 華子

現在のバックラッシュ状況の中で非暴力—暴力に対抗すること(これさえも問いの対象である)とは、どのようなあり方なのであろうか。暴力的ではないあり方を問うこととは、「いかに生きるのか」を問うことにつながろう。本大会でのシンポジウムに参加することによって、「生」のひとつのありようの端緒に触れたように感じた。
見えない暴力、見えない傷、見えない連鎖といった、“見えない”とされていること(このこと自体が文化的暴力である)を、いかに可視化していけるのであろうか。可視化していく試みの一つが「自己表現」の模索なのかもしれない。手探りのなかで、失敗を重ねながら、矛盾を孕みつつも、その都度、その都度、何ができるのか、問いと試みを繰り返す過程。このような過程の中で生起してくる「関係」や「表現」や「生」が、越境しつつ、既存の虚構を揺らがすことにつながるのではないか。
矛盾を孕みつつ、無力さを感じながら営まれる「生」—「生きていること」そのもの—が非暴力という抵抗のありかたにつながるという、本シンポジウムにおける提起は、矛盾と無力さに押しつぶされそうになる日々に「それでよい」という肯定と、そのような日々のなかにこそ「可能性」が生まれてくるという示唆を与えてくれた。そして、「生きていること」そのことを丸ごとで認め合うというありようが、ゆるやかでしなやかな関係を紡いでいくことにつながるのではないかと感じた。

ワークショップ報告

バックラッシュへの<反転攻勢>を考える

日本女性学会ジェンダー研究会(担当:青山薫・海妻径子)

バックラッシュへの<反転攻勢>となるような取り組みを、参加者に紙に記入してもらい、それを司会者が大まかに整理発表した。その上で参加者が2グループに分かれ、自由討論をおこなった。
その結果、バックラッシュへの効果的反撃のための、ネットワークをいかにつくるか、が主な論点となった。
●従来の女性運動の枠を超えつつ、闘いの「場」を他の運動と共有する可能性を探れないか(「教育」という場を共有するかたちで、反「性教育バッシング」運動と、教育基本法改悪阻止運動が連携する、など)
●「草の根女性運動の人にもわかりやすい語り方」をするつもりで、ジェンダーについての議論を単純化することが、逆に「運動」と「研究」との相互理解と連携を難しくしているかもしれない
●「硬直化・教条化したもの」というのではない、フェミニズムのポジティブ・イメージを一般に広げていくことが重要。そのためにも、個人の多様な意見を尊重しつつ連携する、ネットワークのあり方づくりが、ネット空間の活用なども視野に入れつつ、模索されるべき、等の意見が出た。
その他にも、
●メディアや行政をいかにフェミニズムの側に取り込めるかについて、あらためて議論が必要。現状ではバックラッシュ派の「苦情」をマスコミや行政が取り上げざるを得ない状況が生まれている
●バックラッシュには、組織化されたレベル、ゆるやかな草の根保守のレベル、シンパ(同調者)の単独行動によるレベルなどがあり、それぞれのレベルに対応した<反転攻勢>を考える必要がある、等の意見も出た。
ルーティン化した「ジェンダーについての語り口」や組織運営のあり方の、再考が緊急課題だという点では、多くの参加者の意見が一致していたと思われる。問題はそれをいかに実現化するのかである。MLの活用など、現在でも既に模索は行なわれているが、一層ラディカルな試みの必要性が明らかになったワークショップであった。

(海妻径子)

グローバル・メディア・モニタリング・プロジェクト(GMMP)によるニュースメディアのジェンダー分析とメディア・リテラシー

(担当:登丸あすか・西村寿子・レベッカ ジェニスン)

GMMPとは、70数カ国のモニターグループが参加して、世界のニュースメディアをジェンダーの視座から5年ごとに一斉にモニター調査するプロジェクトである。2005年2月に実施されたGMMP2005には、日本から11のモニターグループが参加し、GMMPにメディア・リテラシーワークショップを組み込んだ独自の活動を行なっている。ここではまず、報告者から、GMMPの調査方法とその結果、およびメディア・リテラシーワークショップでのメディア分析の方法とその結果が報告された。その内容をふまえて、コメンテーターを中心とする参加者全体の対話へと展開し、日本におけるメディア・リテラシーの必要性について活発な議論が行なわれた。
GMMPの調査は、主に登場人物に焦点をあてたジェンダー分析である。具体的には、キャスターやレポーター、記者など、ニュースを伝える側の人物と、事件・事故の被害者や加害者、インタビューされる人物など、ニュースで取り上げられる人物の割合を、それぞれジェンダー別に明らかにするものである。調査結果から、日本に限らず世界のニュースメディアに、伝統的なジェンダーの価値観が提示されていることが指摘された。さらにメディア・リテラシーのワークショップでは、オーディアンスである市民が、ニュース番組の構成分析や映像・音声技法に注目した内容分析を行なっている。報告者は、参加した市民による「読み」の内容を報告し、メディア・リテラシーワークショップでの分析と参加者同士の対話をとおして、より多様なメディアの読み解きが可能になることを示した。
コメンテーターからは、対話がオーディアンスである読み手のエンパワーメントの場になるのではないかとの指摘がなされ、教育の場でのメディア・リテラシーの必要性が提起された。参加者からは、メディアで働く女性の少なさなど、日本のメディアの問題点が挙げられた。また、現在、教育の場で行なわれているメディア・リテラシーの授業やメディア分析の実践報告もなされた。

(登丸あすか)

ポルノ被害としての盗撮

(担当:二瓶由美子・宇野 朗子・山本有紀乃)

日本女性学会の会員でもあり、ポルノ・買春問題研究会(APP研)のメンバーでもある宇野朗子、山本有紀乃、二瓶由美子は、APP研の他のメンバー(会員外)の協力を得て、盗撮の現状を報告するとともに、ポルノ被害としての盗撮について参加者と議論を深め、問題を共有した。
ワークショップの冒頭では、盗撮が性被害であることについての解説がなされた。続いて、盗撮の現状が報告されたが、その内容は、最近の新聞記事からの被害事例紹介、被害の場所や加害者像と被害者像についての分析、さらには被害者が受ける影響や二次被害の問題についても言及されるという多角度的なものであり、インターネット時代ゆえの特徴があることも指摘された。加えて、盗撮に関する立法の情報について簡単な説明があった。その後、以上の報告を受ける形で、2チャンネルに代表されるインターネット掲示板にみる「盗撮する側・消費する側」の言説の分析も行った。ここまでの報告は、盗撮機器の進化と大衆化、女性蔑視や性差別を増幅させる手段としての盗撮映像とインターネットがもたらす、女性の人権侵害状況を認識することにつながったと思われる。
最後に、科研費研究の一端として行われた「盗撮防止に向けての企業側の努力」についてのアンケート結果報告と、盗撮に関する法的規制についての解説がなされた。アンケートは、第1回で都内コーヒーショップ、ファーストフード店、フィットネスクラブに向けて行われ、第2回では都内ホテル、デパート、スーパー銭湯を対象に行われた。法的規制については、諸外国の例が紹介され、わが国の現行法についての説明があり、今後の動向が注目される「盗撮禁止法案」についても解説があった。
以上のような報告の後、30名ほどの参加者からは、活発な質問や疑問が出された。なかには盗撮そのものについてというより、警察官による救急車内での盗撮という報道に関して、非常に具体的な疑問なども出され、いかに盗撮事件が日常化しているかが実感された。多くの参加者から感想や批判が相次ぎ、有益な問題共有の場となり、研究の新たな課題を見出す機会ともなった。参加していただいた会員の皆様に感謝したい。

(二瓶由美子)

お 知 ら せ

*幹事会および会員等からの公共性の高い情報を掲載します。
掲載希望はニューズレター担当者までご連絡ください。
ニューズレター担当:伊田久美子:idak●hs.osakafu-u.ac.jp
ニューズレター担当:木村 涼子:kimura●hus.osaka-u.ac.jp
(●を@に書き換えてください)

■会員主催の研究会募集のお知らせ

学会幹事会

詳細は学会ホームページを参照されるか、研究会担当者までご連絡ください。
研究会担当:伊田広行:田嶋陽子
連 絡 先:henoru●tcn.zaq.ne.jp (●を@に書き換えてください)

■国立女性教育会館研究ジャーナル 第11号論文公募のお知らせ

国立女性教育会館
論文、実践事例研究、研究ノートの3種類です。
締め切り:11月6日  詳細は、http://www.nwec.jp

■平塚らいてう賞公募のお知らせ

日本女子大学
「平塚らいてうの研究、または男女共同参画社会の実現および女性解放を通じた世界平和に関する活動や研究を行う個人または団体」が対象です。
締め切り:9月30日
詳細は http://www.jwu.ac.jp/raiteu

■安倍フェローシップ奨学研究者募集

国際交流基金日米センターと米国社会科学研究評議会 (SSRC)
社会科学と人文科学の分野の学者、研究者、また学界以外の分野(ジャーナリズム・法曹界等)の専門家からの応募を歓迎。応募資格は日米いずれかに研究の拠点を持ち、博士号ないしは専門分野での同等の経験を有していること。募集人員は15名前後。研究費、渡航費、滞在費、および給与補償分を支給。支給期間は最短3ヶ月、最長12ヶ月間。
申請はSSRCのウェブサイトにてオンラインでのみ受付。
締め切り:9月1日
詳細は以下のリンクを参照。
公募詳細情報:http://www.abefellowship.info
申請受付:http://applications.ssrc.org
SSRC安倍フェローシップ・プログラム東京事務所
〒107-6021 東京都港区赤坂1-12-32アーク森ビル20階 国際交流基金日米センター内
Tel: (03) 5562-3506 Fax: (03) 5562-3504
Email: ssrcABE●gol.com (●を@に書き換えてください)

■活動報告書のご案内

GenEP企画推進委員:関 啓子・木本喜美子・貴堂嘉之・中野知律・尾崎正峰・佐藤文香
一橋大学・学長裁量経費プロジェクト「一橋大学における男女共同参画社会実現向けた全学的教育プログラムの策定」(GenEP)プロジェクトの活動報告書ができあがりました。この報告書には、2005年度の活動報告として、全学学生アンケート結果、公開講座記録、国内・海外視察報告、ワークショップ記録が収録されています。大学における男女共同参画への取組みにご関心をお持ちの方々に是非、手にとっていただきたく、ここにご案内させていただきます。
報告書をご希望の方は、送料実費にてお分けいたしますので、住所・氏名を明記し、80円切手3枚を同封の上、下記までお申込ください。

〒180-8601
東京都国立市中2丁目1番地
一橋大学大学院 社会学研究科事務室気付
GenEPプロジェクト
なお、本件に関するお問い合わせは、
genep●soc.hit-u.ac.jp までお願いいたします。(●を@に書き換えて下さい)

■会員からの寄贈図書

*寄贈本で会員が著者もしくは編者である単行本新刊書誌情報を掲載します。

バーバラ・チェイス=リボウ著/石田依子 訳 『サリー・ヘミングス 禁じられた愛の記憶 ジェファーソン大統領の愛人奴隷として波瀾の生涯を生きた女』 大阪教育図書
2006年3月
2,520円(税込)
小平麻衣子・氷見直子 共著 『書いて考えるジェンダー・スタディーズ』 新水社
2006年4月
1,943円(税込)
投稿日: 2006年8月1日 カテゴリー: NewsLetter

「暴力AV研究会」報告

日本女性学会の研究会補助制度による補助を受けて、「暴力AV研究会」を2006年6月25日(日)、東京都内において開催した。参加者は8名と少人数だったが、活発な質疑応答がなされ、今日の暴力AV制作現場の実態を知る有意義な機会と なった。
今日、「レイプもの」「監禁もの」と呼ばれる、女性への様々な虐待を映像化したビデオやDVDの存在とその社会的影響について問題視する声が広がりつつある。実際に、AV撮影現場における集団強姦と拷問・虐待によって重い傷害を受け、後遺症によって車椅子生活を余儀なくされた被害女性の訴えによる事件(現在公判中)も起きている。
そこで、そのAV会社のAV制作現場にライターとして居合わせ、壮絶な現場の暴力を目の当たりにして問題提起したMさんの経験、AV女優と呼ばれる女性たちの労働の実態についてお聞きした。現場の映像を使用しての報告により、参加者は構造的な暴力の存在について詳細な事実を知ることになった。 「つぶす」という表現で、「使い古されたAV女優」が暴力AV出演を最後に映像から消えていく現実は、女性の身体と尊厳が搾取されている実情を明らかにした。

また、11月24日(金)午後6時から、新たに、「暴力AV研究会 その2」を企画している。この回では、AV女優派遣事務所のマネージャーから、AV女優と呼ばれる女性たちの派遣労働の実情をお聞きする予定だ。
女性学会会員のみなさまにも是非参加していただき、問題を明らかにしたいと考えている。研究会に参加を希望 される方は、y-nihei●ssjc.ac.jp までお問い合わせください。(メールアドレスの●を@に置き換えてください)

(文責 二瓶由美子)

学会活動の自由と公正のための宣言

2006年6月10日
日本女性学会総会において採択

学会において、それぞれの会員が自由に活動をするためには、他人の権利の侵害、不当な差別やいやがらせ、研究活動上の不正のない、公正で対等な関係が不可欠である。
この宣言は、学会活動を十分に行う環境を作るため、日本女性学会の基本的姿勢を確認するものである。本学会は、「あらゆる形態の性差別をなくし、既成の学問体系をこえた女性学の確立をめざし、そのため、研究および情報交換を行なうこと」(本会規約)を目的としている。会員は学会の目的に反する活動をしない。また、あらゆる形態の差別をしないことに加え、今日新しく提起されているハラスメント行為についても視野に入れ、これを行わないことを確認する。

  1. 会員は、人種、民族、国籍、宗教、障がい、門地、年齢、容姿、性別、性自認、性的指向、婚姻上の地位、子どもの有無、その他あらゆる形態の差別をしない。
  2. 会員は公正に研究、調査活動を行う。調査対象者、研究協力者などのプライバシー権や人格権を尊重し、不利益を与えることをしない。
  3. 会員は、学生や院生、オーバードクターやポストドクター、研修員等も含め指導している者、雇用している職員や同僚など誰に対してもセクシュアル・ハラスメントおよびアカデミック・ハラスメントをしない。
  4. 会員は、直接・間接の監督・指導・評価などにおける職業上の地位を利用した搾取をしない。
  5. 会員は、公正に学会活動を行う。学会活動には、学会誌紙の編集発行、大会、研究会の運営や発表、参加などの他、学会を運営するあらゆる事柄を含む。
  6. 学会は、この宣言を実現するため、必要に応じて規程およびガイドラインを設ける。

日本女性学会・ジェンダー研究会編 『男女共同参画/ジェンダーフリー・バッシング−バックラッシュへの徹底反論』

書籍ご案内

日本女性学会・ジェンダー研究会編
『男女共同参画/ジェンダーフリー・バッシング−バックラッシュへの徹底反論』

出版社の書籍紹介ページ

近年、男女共同参画やジェンダーフリー、性教育などが批判されています。「バックラッシュ」や「バッシング」と呼ばれるこれらの批判は政府やメディアに影響を与え、ジェンダー/ジェンダーフリーへの言葉狩り、性教育の内容への介入などが起こっています。このような状況の中で行政担当者・教育関係者や、これまでさまざまな場で男女共同参画/ジェンダーフリーにかかわってきた人々は、まっすぐにものが言えないようになってきています。

そこで、日本女性学会内部にできたジェンダー研究会では、男女平等やジェンダーに関わる問題や質問にわかりやすく答え、バックラッシュ派に反論していくために本書を企画しました。執筆者は、主にジェンダー研究会に参加した研究者です。私たちは、多くの人に男女共同参画/ジェンダーフリーについて正しく知ってもらうこと、そして、バックラッシュ派のうそやごまかしにだまされず、みんなが堂々と自分の思いや意見を言える社会を作っていくことを願っています。

ジェンダーの定義や男女平等、男女共同参画社会をめぐっては、専門家の間でも多様な見解があります。したがって、本書は、執筆者全員の意見が完全に一致して書かれているわけではありませんし、日本女性学会の統一見解が示されているわけでもありません。執筆者は、担当した項目を自分の意見で書いています。執筆者共通の基本的な視点は、性差別のない、ジェンダー平等が実現される社会、多様な人々が多様なままで認められ、生きていける社会を作ろうという願いです。

本書の構成は、各質問に答えていくQ&A形式を中心としていますので、どこからでも読むことができます。また、最初に「ジェンダー」に関する基本的なスタンスをまとめましたから、適宜参照してください。Q&Aの後ろには、ジェンダー関連用語の基本的意味やバックラッシュの背景、政府の「ジェンダー」及び「ジェンダーフリー」に対する見解、参考文献、資料などを掲載しました。参考にしてください。

日本女性学会・ジェンダー研究会編集委員会